「安倍は変わった」柔軟な国益重視の外交手腕、海外識者が高く評価

Frederic Legrand - COMEO / shutterstock.com

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 第2次安倍政権が発足して4年半が経過し、これまで回転ドアのように首相が交代していた日本には珍しい長期政権となっている。海外メディアは、安倍首相がイデオロギー主義者から実利主義者に変貌を遂げたことがその理由だとしており、首相の外交手腕などを高く評価している。しかし、このところのスキャンダルなどへの対応のまずさから支持率は急落しており、長期安定政権の行方を心配する声もある。

◆イデオロギーで失敗。再登板で実利主義に
 これまで安倍首相は英語圏のメディアでは「愛国主義者」、「超保守」、「修正主義者」などのレッテルを張られてきており、決して評価はよくなかった。ディプロマット誌に寄稿した英シェフィールド大学の研究者、ディミトリ・フィリポフ氏は、安倍首相は日本が平和憲法に縛られない真に独立した国になるべきという思想を持つ人物だとする。しかし、安倍首相の外交政策を分析する場合は、個人としての安倍晋三と、首相としての安倍晋三の違いをはっきりさせることが重要だと主張する。

 同氏は、安倍首相は2006年から2007年の第1次安倍政権で、民主主義、法の支配、人権などの普遍的価値を共有する国々との協調を図るという「価値観外交」を方針にし、イデオロギーにフォーカスして失敗したが、2012年の再登板以降は、失敗から学んで、より実利的な政策で国益重視に方向転換したと見ている。

◆国益第一。トランプ大統領の信頼も勝ち得た
 コロンビア大学教授で政治学者のジェラルド・カーチス氏も、安倍首相は第2次政権発足時には予想しなかった柔軟性を見せているとし、2013年を最後に靖国参拝をやめたこと、改憲に関しても大幅な改正ではなく、現9条を堅持し自衛隊の合法性を認知する部分を新たに加えるとしていることなどを例に上げている(イーストアジア・フォーラム)。

 カーチス氏は、国益重視の最たるものとして、安倍首相がトランプ大統領誕生後すぐに会談に出向いたことを上げる。独裁的な核保有国の中国、北朝鮮、ロシアを隣人とし、民主主義国家の韓国とも歴史認識問題で緊張関係にある日本にとって、誰が大統領になろうとも、日米同盟が日本の安全保障に必要なことを安倍首相は理解していた。同盟の安定を確実なものとするため、「charm offensive(目標達成のため、意図的にお世辞や自分の魅力を利用すること)」でトランプ大統領の信頼を勝ち得たことは見事だったと同氏は評価している。

 さらに同氏は、安倍首相はリスクヘッジも考えており、オーストラリア、東南アジア、インドとの安全保障関係を強め、欧州とはパリ協定で協力し、ロシアとの北方領土問題解決をめざし、中国の「一帯一路」参加への興味を示すなど、まさに不安定な世界でいかに日本の国益を守るかを考えた外交を行っていると述べている。

◆安定が評価された政権。スキャンダルが致命傷となるか?
 一方、USニューズ&ワールド・レポートは、長期政権となっている理由は別のところにあると見ている。同誌は、世論調査ではアベノミクスの成果には大多数が懐疑的で、財政出動と金融緩和はしたものの、経済を活性化させる構造改革が続かず失敗と見られていると述べる。しかし、経済面での失敗を無視してでも安倍政権が高い支持率を維持するのは(注:記事は6月1日付)、回転ドアのように首相が変わることを過去に経験してきた国民が、変化より安定を好むからだと結論づけている。

 もっとも、最近の一連のスキャンダルで、民意に変化が起きている。安倍政権の支持率は急降下し、東京都議選にも影響を与え、国内各紙によれば、小池東京都知事が代表を務める「都民ファーストの会」が優位に戦いを進め、自民党は苦戦している。政治アナリストの有馬晴美氏は、都議選で自民党が負ければ、安倍首相の進退問題につながるとブルームバーグに述べている。

 安倍首相を評価する多くの海外メディアは、スキャンダルで支持率が落ちるまでは、長期安定政権になると予想していた。中央大学の森信茂樹教授は、長期政権となった安倍政権と自民党は「短期的な有権者の苦情や幻滅を懸念している」(USニューズ&ワールド・レポート)と指摘していたが、まさに今、その心配が現実となっている。

Text by 山川真智子