イヴァンカ・トランプとジャレッド・クシュナーは力を持ちすぎているのか?

s_Ivanka Trump and Jared Kushner

著:Henry F. (Chip) Careyジョージア州立大学 Associate Professor, Political Science)

 トランプ大統領の「新しい」外交政策に最近多くの注目が集まっている。

 この政策の変化は、米国がシリアのシャイラト空軍基地へミサイル攻撃をしたことに象徴される。これはシリア・イドリブ県で反乱軍に対し、シリアの大統領バシャール・アルアサドが毒ガス攻撃をしたと疑われている事件に続いたものだ。

 国家安全保障会議も再編されている。前大統領補佐官のマイケル・フリンはロシア駐米大使と会談していたことについて虚偽の発言をして辞任し、前副補佐官のK.T. マクファーランドは退官させられシンガポールでの駐在大使となった。後任には、H.R. マクマスター中将を大統領補佐官として、その戦略副補佐官としてディナ・パウエルが就いた。トランプのアドバイサーであるスティーブ・バノンを国家安全保障会議から外したことは、より伝統的な外交政策に従うという明らかな動きを示している。

 何がこの明らかに前向きな変化を動かしているのか。さらなる伝統的なアプローチへの動きには、最近ホワイトハウスの職員として指名されたトランプの娘イヴァンカと、夫でありバノンを超すシニアアドバイザーであるジャレッド・クシュナーの大きな影響がうかがえる。二人は、「ゲートキーパー」の著者であるクリス・ウィップルが「米国歴史上で最も機能を果たしていないホワイトハウスの参謀長と大統領」と呼ぶものを修復しようとしているのかもしれない。

 この二人はバノンが皮肉を込めて「ニューヨーカー」や「ゴールドマンサックス」と呼ぶホワイトハウスの派閥を強くしてきた。バノン自身はそうした派閥とは逆の、国家主義で孤立主義、人民主義である派閥を導いている。

 この対抗がどう続こうとも、トランプ任期の「ハネムーン段階」ではっきりとしていたことは、影響のある個々人は支離滅裂で衝動的な統治のスタイルを作ってきたということだ。シリアに爆弾を落とすことを一晩で考えたような、個人的な決断プロセスに支配されている。ケネディやクリントンも家族の一員を行政に参加させたが、この省庁間の検討を無視する突発的なスタイルは、現代の大統領において新しい流れだ。トランプは民主主義の制度より、むしろ個人的な関係に頼っている。

 私は異なるタイプの政府を研究した比較政治学者として、家族に結びついた個人的支配が、どのように権威主義の利益になるよう民主主義制度を侵食するのか興味がある。学者たちはこれを「スルタン主義」と呼ぶ。

 説明させてほしい。

◆スルタン主義とは何か
 有名な政治社会学者マックス・ウェーバーが「主として自由裁量を基本として機能する」と書いて、スルタン主義の概念を作ったのは1世紀以上前だ。

 「スルタン」もしくはオスマン帝国の王は完全なる支配者であり、神学によって権力は正当とされた。彼らは独断と独裁的な権力を行使した。彼らのライフスタイルは豪華で不道徳であった。そして時間とともに権力を失ったのだ。ライバルであるハプスブルクのオーストリア=ハンガリー帝国や、ウェーバーの母国であるドイツのようなヨーロッパの帝国は、民間と軍隊の素晴らしい官僚制と手順を発展させて19世紀に強化していった。一方、オスマン帝国は衰退していった。

 コロンビア大学のAlfred Stepanと亡きJuan J. Linzは、スルタン主義は政体の種類(民主主義や権威主義)であり、かつ民主主義を含めるどんな政体の種類においてもあり得る、個人的支配のスタイルを表す形容詞であると論じた。彼らはこう記した。

「スルタン主義の本質は抑制されない個人的支配で、イデオロギー、合理的な法的模範、またどんな権力のバランスにも拘束されない。」

 スルタン主義は言い換えれば、権威主義と独裁支配においてよくあるものだが、リーダーが設立された制度や法的な過程を踏まずに決断を個人化してしまう時、民主主義でも存在できるのだ。

 ハイチのデュバリエ、フィリピンのフェルディナンド・マルコス、ソ連のジョセフ・スターリンなどの古典的なスルタン主義支配と米国のリーダーを比較するのは、関連がないと思うかもしれない。このような政体は非民主主義で家族が密接に関わっている一個人の支配だ。

 しかし、米国と同じような民主主義である大韓民国のパク・クネ大統領は、親しい身内のアドバイザーに関連した不道徳な行動のため、12月4日に弾劾された。伝えられるところでは、そのアドバイザーはシャーマンで、ラスプーチンタイプの宗教的人物の娘である。この娘の父親は、パク大統領の父親が大統領であった18年間において密かにアドバイスをしていた

 他の例はニカラグアでも見られる。三期連続の就任となるために最高裁に申し立てたダニエル・オルテガ大統領は、副大統領に妻であるロザリオ・ムリジョを副大統領に就任させている。彼女はオルテガが信頼する数少ないリーダーの一人であり、彼は党派の大部分を遠ざけている

◆アメリカでの先例
 アメリカでは過去にスルタン主義の傾向が存在していた。

 ジョン・F・ケネディ大統領に一番近いアドバイザーであり、かつ司法長官の役職には彼の弟であるロバートが就いていた。キューバミサイル危機の危険な時期には、不可欠な存在であった。ケネディ大統領は任務中に、時には弟ロバートを加えて、疑わしい政治的接点を持つ女性達と肉体的関係を持つという大きなリスクを犯した。マフィアにつながりのある社交界の著名人から、東ドイツのスパイと疑われる人物に及ぶまで。これは単なる彼の軽率さではない。

 これに対する議会の反応は1967年「ボビーケネディー法」という通称がつけられた反縁故法を通すことだった。これは近い親類が公式な職に就任しないというものだ。しかし、この法律は非公式なアドバイザーを除外しないと言う者もいる

 スルタン主義の他の例は、大統領である夫のリードで、無給でヘルスケア改革のアドバイザーをしたヒラリー・クリントンだ。

 そして、ジョージ・W・ブッシュの閣僚には最も権力のある外交政策のアドバイザー、国防長官のドナルド・ラムズフェルドと副大統領のディック・チェイニー。両者ともジョージ・W・ブッシュの父親、ジョージH.W.ブッシュ大統領体制の同窓生だ。9.11テロ攻撃の後、ブッシュの許可を得て、ラムズフェルドとチェイニーは拷問、令状無しの監視活動、目標を定めた暗殺を許可する恣意的な政策を作った。

 このブッシュ時代の国家安全保障に関する「自由な法律」は独裁的と呼ぶ者もいるが、「行政権一元化」の法的概念に基づいていた。これは司法府と立法府は、特に国家安全保障に関することで、「行政」事項について大統領を監視・規制することはできないという考えだ。

 大統領がすべて行政権を独占すると断言することにより、行政権一元化はスルタン主義を助長しているのだ。この理論は基本的に大統領を法律より上に配置する、とある有名な憲法学者達は述べている。

◆トランプの違いは何か
 多くの現代のアメリカ大統領は米国民主主義の制度(州の政治党派、米国国会議事堂、軍隊)を通じて登り上がってきた。彼らは制度上のルール、姿勢、そして関係に組み込まれてきたのだ。「孤立状態を脱した」トランプのような者はそれとは対照的に、家族や親しい仲間を連れて、公式、非公式な制度を超えた決断をする。

 型破りのキャンペーンによる予測不可能な勝利を影で操り、衝動的で予測不可能な決断を下しながら、トランプは政治での主要な決断について直感を信じる傾向を既に示している。彼のCEOとしての過去の経歴や、政治の門外漢であることにより、トランプは独立独行となり、世界の多くは間違った方向へ導かれていて、トランプと家族を含む数少ない信頼するアドバイザーだけが答えを握っていると確信しているのだ。

 例えば、「私たちの国の代表が、何が起こっているのかを突き止めることができるまで」イスラム教徒の入国を禁止するという公約を質問された時、彼はこう答えた。

「私がしていることはルーズベルト大統領と何ら変わりはないのです。彼がしていたことを見てみると、もっと最悪です。彼の名にちなんで高速の名前をつけられていますし、彼は最も高く尊敬された大統領の一人です。」

 トランプは1944年のコレマツ対アメリカ合衆国事件の判決を思い起こさせる。この判決は、日系アメリカ人を何の転覆の証拠もなく(そして何も存在していなかった)拘留することを許可する移民局のほぼ無限の執行権を支持した。この判決は最高裁判所の歴史において最も恥ずべきことで、「繰り返すべきでない悲劇的な誤り」と多くの憲法学者は考えている。亡き司法官のアントニン・スカリアでさえ、これは「間違い」だと否認している

 米国大統領の任期にはスルタン主義の傾向が生じやすいのだが、トランプ大統領下においてはめったにない出来事が、予測通り政治のやり方になってきている。組織上の親しいアドバイザー(イヴァンカやクシュナーなど)と非公式な親しいアドバイザー(トランプの二人の成人した息子)が両方とも家族の一員により支配されると、決断をする過程は常識を逸していて家族の私的関心に影響され得るだけでなく、これまで試練に打ち勝ってきた法の手続きを無視する傾向があるだろう。

 トランプ大統領は法の支配下の「ライバルを集めたチーム」というよりも、法の手続きではなく、宮中政治により決断を行っていた古風な君主政体に類似しているかもしれない。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by Conyac
photo via Wikipedia Commons/Adapted
The Conversation

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