日英が手を組めば世界をリードできる、期待寄せる英紙 ブレグジットで関係発展の可能性

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 27日から30日までロシアとイギリスを歴訪していた安倍晋三首相が28日(日本時間29日)、イギリスのテリーザ・メイ首相と会談を行った。英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を見据えた選挙活動に入る直前のメイ首相と、北朝鮮から弾道ミサイルの発射が続くなか訪英した安倍首相の動きに、英国メディアも注目した。

◆日英関係の重要性を強調
 メイ首相が安倍首相をもてなしたのは、ロンドン中心地から約60キロ北西にあるイギリス首相の地方官邸「チェッカーズ」だ。メイ政権下でチェッカーズに招かれた世界の指導者としては安倍首相が初めてとなった。会談当日にメイ首相は声明を発表し、日本との関係の重要性を強調した。

 今回の会談で注目されたのは主に2点だ。まずは朝鮮半島の緊張への対応について。声明でメイ首相は、英国と日本は国際社会と共に協力して臨むと述べている。そしてもう1つは、ブレグジットに絡む経済・貿易面だ。メイ首相は会談で、ブレグジットに向けた現状を安倍首相に説明し、EU離脱後もイギリスは、企業がヨーロッパで事業展開したり成長したりする際に最適な場所であり続けると伝えたという。同声明によると、イギリスには約1000社の日本企業が事業展開しており、14万人の雇用を生み出している。

 しかしイギリスの日本に対する期待は、単に2国間の関係を良好に保つだけにとどまらないようだ。テレグラフ紙は会談に先立つ28日朝付で、「イギリスと日本は今、世界を新しい形に作り上げる比類ないチャンスを手にしている」という記事を掲載した。安倍首相とメイ首相はアメリカのトランプ大統領にとって最も近しい人物であり、もし両首相さえその気になれば、アメリカを含む3国間の関係を形成し、新しい世界経済・政治を形成することも可能だと言うのだ。

◆日英自由貿易の可能性
 テレグラフの記事は、3国間協定にたどり着く前には、まず日英関係を強化していく必要性を述べており、その方法を示唆している。アメリカの環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱で動揺する日本と、EU離脱から受ける打撃を緩和すべく早いところ何かしらの貿易協定を固めたいイギリスで、まずは2国間自由貿易を交渉し始めるべきだ、とテレグラフは指摘する。世界経済3位の日本と5位のイギリスが自由貿易の交渉に入れば、世界に対して「自由貿易はまだ死んでいない」という強力なメッセージを送ることができるというのだ。

 メイ首相は声明で、日英で協力して自由貿易を支持していく意志を再確認しあったと述べたが、自由貿易が日英2国間など特定の国や市場を指しているわけではないように受け取れた。現に、今年1月に駐日大使として着任したポール・マデン駐日英国大使は、2月16日付で掲載された日経アジアン・レビューとのインタビューで、イギリスが正式にEUを離脱するまでは他国との交渉を正式には開始できず、2国間協定の相手国としてどこか具体的な国名が決まっているわけではないと話していたのだ。

 一部の日本のメディアは28日の日英首脳会談時に、ブレグジット後に2国間自由貿易協定の交渉を開始する可能性について話が及んだことが明らかになったと報じた。ただし安倍首相は、日本とEUは現在、日欧経済連携協定の交渉をしており、そちらの大筋合意がまずは優先との考えを示している。

◆軍事面ではすでに日英米で協力
 メイ首相は声明で、軍事面での協力についても言及している。イギリスの国家安全保障にとって日本はアジア最大の同盟国だとしており、ロシアや南シナ海、東シナ海、北朝鮮など諸問題で協力していくと述べている。

 軍事面での日英の協力関係に関しては、アメリカの雑誌ナショナル・インタレスト(電子版)が、中国に対抗する日英米による新たな3国間同盟の可能性を示唆する記事を出している。記事はその根拠として、2016年10月に米国防総省で英米の海軍と日本の海上自衛隊が、前例のない3者間協力協定に署名したことを挙げている。この協力協定は正式な条約ではなく現在のところ象徴的なものにとどまっているものの、将来的な協力に向けたロードマップになるという。

 ナショナル・インタレストはまた、世界情勢がますます不透明になる昨今、こうした非伝統的とも言える非公式な安全保障協力が増えていると指摘する。EUから離脱するイギリスはEU以外の強力な同盟相手を見つけることが必須で、自由民主主義国家であり国際的なルールに基づいた制度を維持したいと考えている日本とアメリカはその相手として、自然な選択肢だと指摘する。

 キャメロン政権時代は、アジアのビジネス相手として中国にばかり夢中になっているように見えたイギリスだが、2019年3月までに完了させなければならないブレグジットを前に、経済と安全保障面での新たなパートナーを模索するメイ政権は、日本の存在も念頭に置いているようだ。

画像出典:首相官邸

Text by 松丸さとみ