東シナ海ガス田で中国提訴は得策ではない? 予想される中国のカウンター攻撃とは

 中国が、東シナ海の日中中間線付近でのガス田開発を着々と進めている。自民党は、解決に向けて早急な中国政府との対話の再開を求めるとともに、国際仲裁裁判所に提訴することを検討するよう求める提言を、安倍政権に行なう予定だ。

◆資源だけの問題ではない
 ロイターによれば、提言を取りまとめた自民党の「東シナ海資源開発に関する委員会」の委員長、原田義昭衆院議員は「もし中国が要望を無視するのなら、なんらかの行動を取らなければならない」とし、「国際仲裁裁判所への提訴を避けず、準備を始めるべきと皆が同意した」と述べている。

 そもそも東シナ海では、沿岸から200海里とする排他的経済水域が日中間では重なっており、境界線は画定していない。日本は中間線を境界線とすべきと主張しているが中国は受け入れず、ガス田の開発を続けてきた。日中は2008年に、中間線付近でのガス田共同開発で合意したが、2010年に尖閣問題が悪化して以来、交渉は中断したままだ。すでに中国は中間線付近に16基のガス田構造物を建設しており、この2年間で12基も増やしている。

 ナショナル・インタレスト誌は、ガス田問題は資源問題であるだけでなく、防衛上の問題でもあると述べる。最新の日本の防衛白書では、構造物はレーダー基地や空中偵察実施の目的に利用される可能性もあると指摘されており、同誌はこれが中国の東シナ海での存在感を高め、尖閣諸島に対する日本の支配の弱体化の始まりにもなりかねないと述べている。

◆国際司法に提訴でも期待薄
 しかし、ガス田問題を国際仲裁裁判所へ持ち込んでも、中国が応じないことは明白だ。すでに南シナ海の領有権問題で、フィリピンがハーグの常設仲裁裁判所に中国を提訴しているが、中国は同裁判所の管轄権を拒絶して参加を拒否しており、「疑う余地のない主権」を主張し、領有権問題は譲れないという態度を明確にしている。

 シドニー・モーニング・ヘラルド紙(SMH)によれば、ほとんどの専門家がフィリピンの勝訴を予測しているが、負けても人工島が解体されると見る人はだれもいないし、フィリピンの抗議団体も、中国の態度が変わることはないと述べている。相手が日本に代わっても、中国が同じ対応をすることは予測できるだろう。

 ナショナル・インタレスト誌は、安倍政権と協力し、自民党が中国を交渉のテーブルに着かせるため法的手段に訴えると脅せば、中国は賢くカウンター攻撃に出るだろうと述べる。

「日本が尖閣の領土問題も含め、国際司法の裁定を受けると言うなら、喜んで同意する」という声明を中国が出した場合、尖閣に領土問題は存在しないという立場を取る日本には深刻な挑戦となる。もしそうなれば、政府は答えに窮するだろうとし、同誌は提訴が得策ではないと見ているようだ。

◆自前の裁判所も計画
 シンガポールのストレーツ・タイムズ紙(ST)は、中国がその主権、海洋上の権利、「革新的利益」をよりよく保護するため、国際海事司法センターの設立を目指していると報じている。東シナ海の問題に詳しい、イアン・ストーリー氏は、中国は既存の裁判機関が「欧米寄りで中国に偏見を持つ」と見ており、自国の海事法廷を設立することで、それらを回避しようとしていると述べる。

 中国はまた、海洋裁判のハブになることで、「中国の英知で国際海洋法を向上させる(ST)」ことも目指しており、周辺国を巻き込んで、調停においてもその影響力を強めようとしているようだ。

 今回自民党は強い態度で挑む姿勢を見せたが、東シナ海の領土問題解決のハードルはかなり高いと言える。今後も解決に向けては、長い時間と努力が必要になりそうだ。

Text by 山川 真智子