想定甘い、日本の太陽光発電固定買取 “ドイツの失敗活かせず”と英誌

 福島の原発事故以来、日本の原発は停止したまま。原子力発電の穴を埋めるにはどうすればよいのか?原発停止や、再生可能エネルギーを取り巻く問題を、海外メディアが報じている。

◆原発建設は今も世界のトレンド
 ブルームバーグは、福島の事故以後下落していたウラン価格が、今年18%上昇したと報じ、5月以来上昇相場となっていると報じている。九州電力の川内原発に再稼動のめどが立ったことで、日本の原発が再稼動するという期待が、価格上昇の一因であるらしい。

 かつて日本はアジア最大の原子力発電大国であったが、現在すべての原発は停止中。それとは対照的に、世界的に原子力発電は増加しているとブルームバーグは指摘する。世界原子力協会によれば、現在13か国で60機以上の原子炉が建設中。そのほとんどはアジアで、中国の建設が26とほぼ半分を占める。日本の再稼動と並び、中国の新規の原発建設による需要が、トレーダーたちにさらなるウラン価格上昇を期待させていると、ブルームバーグは説明している。

◆太陽光は前途多難
 エコノミスト誌は、原発停止で本格化した日本の太陽光ビジネスに注目。2012年に世界で最も高いレベルの再生可能エネルギーの固定買取価格が設定されたため、太陽光を主とした再エネ事業者からの申請が殺到し、電力会社が送電網への接続を拒んでいる現状を説明する。

 同誌は、同様の問題はドイツでも起きていたと指摘。20年間固定の買取価格と送電網への優先アクセスを約束したことから、小規模事業者が続々と参入し、結果としてその補助金の消費者負担は、昨年160億ユーロに達しているという。さらにいくつかの電力会社は国を提訴。補助金によりビジネスが損害を被ったからだ。

 経産省は、買取価格を抑え、再エネ業者の参入に備え、送電網をアップグレードすべきだったと、コンサルタントのトム・オサリバン氏は述べ、同時に電力会社から独立した送電網事業者を作るべきだったと指摘する(エコノミスト)。

 日本最大の太陽光プロジェクトのトップを務める山崎養世氏は、日本政府は、600億ドルを次の20年間に再エネ買取のため費やすと予想。同氏は、金は使いようだと言い、化石燃料に多額の出費をしている今、その負担を軽減するためにも、年金基金や低利の口座に縛られた莫大な日本の資産を、再エネプロジェクトに投資することを提案している(エコノミスト)。

◆これからの電力供給は?
 電力系サイト『Energy Global』は、日本の新エネルギー政策に着目し、Cedigazのレポート「日本の新エネ政策:安定的で競争力あるエネルギー供給を目指して」を紹介している。

 レポートによると、日本は「アジア・プレミアム」と呼ばれる天然ガスの調達コストを下げるため、LNGの開発プロジェクトに出資するなど、幅広い戦略を考案。また、輸入価格がガスの5分の1という安価な石炭の再評価も進んでいる。すでに東京エリアをメインに、40ギガワット以上の新規のガスと石炭火力の発電所が建設されているとのことだ。

 本格的原発再稼動が進まない今、次のエネルギーの担い手を探す取り組みが着々と進んでいる。

Text by NewSphere 編集部