日本のクマラスワミ報告訂正要求、米紙が批判 “慰安婦への国際認識に挑戦”

 菅官房長官は16日、慰安婦は「性奴隷」と結論づけた、1996年の国連人権委員会の「クマラスワミ報告書」を作成したスリランカの弁護士、クマラスワミ氏に、日本政府として報告書の部分的撤回を求めたと発表した。クマラスワミ氏は要請を拒否した。

◆中国報道はまずまず冷静
 新華社は、共同通信のニュースとして、日本政府が、いわゆる「吉田証言」に基づく「慰安婦」記事の多くを朝日新聞が撤回したことを受け、今回の行動に出たと報道。外務省の佐藤人権人道大使が、ニューヨークでクマラスワミ氏に面会したが、クマラスワミ氏は「吉田証言」が証拠の一部を構成するに過ぎないとして、報告書の撤回や訂正の必要はないと述べたことなど、比較的冷静に淡々と伝えている。

◆韓国は非難しつつも慎重
 韓国聯合ニュースは、外交部の報道官が「日本政府が河野談話の検証を通じ談話の形骸化を試みたのに続き、吉田清治氏の証言の検証を口実に慰安婦問題の本質をぼかそうとすることを、決して容認できない」とし、「これまでと同様に、国際社会の厳しい批判を招く」と述べたことを報じた。

 しかし報道官は、局長級、次官級の対話の機会に、日本には韓国の立場はよく説明しているとも述べ、特別に日本に抗議を申し入れてはいないことを示唆した。

◆ここぞと厳しいNYT
 一方、ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、日本政府に辛辣だ。「クマラスワミ報告の一部に異議を唱えるという決定は、日本で婉曲的に『慰安婦』と呼ばれる女性たちが、日本兵に性行為を強要されたという国際的な認識に疑問を投げかけようとする、影響力ある保守派のキャンペーンの一部と見られる」と皮肉たっぷりに述べている。

 さらに、慰安婦は自らの意志で働いた普通の売春婦で、性奴隷(同紙は「慰安婦」よりこの表現を多用)問題自体がねつ造だと主張するため、保守派は朝日新聞の記事撤回に飛びついたと報じている。

 NYTはまた、日本の学者の主流派の多くと、日本人以外の研究者のほとんどは、吉田証言ではなく、1990年代に長い沈黙を破って名乗り出た多くの女性の証言を主に強制性の裏付けとしていると指摘。読売新聞のインタビューで、クマラスワミ氏も報告書はほとんどが「多数の慰安婦」の証言に基づいており、吉田証言は引用されはしたが、結論においては大きな役割は果たさなかったと述べたことを報じている。

 彼女たちの証言が偏っており、信頼できないと述べ、それを裏付ける文書化された証拠も欠如していると指摘する保守派からの意見に対し、NYTは、敗戦後数週間のうちに、戦争犯罪として裁かれるのを恐れて、日本軍がほとんどの記録を燃やしたと、元慰安婦の支援者たちが反論しているとも述べている。

 安倍首相を「率直な物言いをするナショナリスト」と呼ぶNYT。歴史問題では、現政権とはなかなか認識が合わないようだ。

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Text by NewSphere 編集部