猪木議員のプロレス外交、米紙が評価 北朝鮮に「ソフトパワー」通用するか注目

 21日、日本維新の会のアントニオ猪木参院議員が記者会見を開き、30、31日に北朝鮮で開催するプロレス大会「インターナショナル・プロレスリング・フェスティバル in 平壌」に向けた意気込みを語った。

 今回のプロレス大会は、「(日朝)政府間の話し合いのための環境づくりだ」と猪木議員は述べる。

「拉致問題が解決したら、政府は北朝鮮と話し合うとしているが、話し合いをしないで、どうやって解決するのか。後先が違っている」

【ロッドマン氏の失敗】
 半年前の1月には、米プロバスケットボールNBAの元スター選手、デニス・ロッドマン氏が平壌でバスケットボールの試合を開催した。

 金正恩第1書記の誕生日を祝い、金氏が「生涯の友だ」と語ったロッドマン氏に関しては、批判的な報道が多かったとワシントン・ポスト紙は述べる。

 だが猪木議員のスポーツ外交に関しては、日本で批判が起らない。これは猪木議員の師匠で、日本プロレスの開祖とされる力道山が北朝鮮出身であり、猪木議員が1995年にも平壌で大規模なプロレスイベントを開催しているからだ、とワシントン・ポスト紙は見る。

【過去に実績】
 さらにワシントン・ポスト紙は、猪木議員のスポーツ外交が過去に挙げた実績も紹介している。

 1990年に勃発した湾岸戦争の際、サッダーム・フセイン政権下のイラクでは100人以上の在留日本人が実質的な人質となっていたが、猪木議員はイラクで「平和の祭典」を行うことを発表。このイベントの開催後に、在留日本人が解放されたのである。

【ソフト・パワー】
 ワシントン・ポスト紙は、スポーツ外交の理論的根拠と言えそうな、「ソフト・パワー」にも触れている。これは、軍事力とは異なり、心情的な共感を背景に他国を味方に付ける力のことである。

 ハーバード大学の政治学者で、ソフト・パワー論の生みの親であるジョセフ・ナイ氏は、2008年にニューヨーク・フィルハーモニックが平壌でコンサートを行ったものの、米朝関係が改善されなかったことを挙げ、「北朝鮮に関して、これが通用するかは少々疑わしい」と述べる。

 だが、ナイ氏は、音楽やスポーツでの訪問のような文化的交流は善意の証とみなされるかも知れない、と語る。

【WSJインタビュー】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、猪木氏に対して行った独自インタビュー記事を掲載。その中で猪木氏は、「私がやろうとしているのは基本的にスポーツ外交。今回のイベントを通じて、向こうが何を発信したいのか、自分たちが変わろうとしている、ということを非常に強くメッセージとして送りたい。話し合いできる環境作りをスポーツ交流を通じて行いたい」と述べている。

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Text by NewSphere 編集部