“日本は今でも慰安婦の人権を侵害”国連高官が批判 韓国紙、国連に「言葉ではなく行動」要求

 ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官(73)は6日、「旧日本軍の慰安婦被害者に対する人権侵害は今でも続いている」、と公式声明で批判した。さらに、日本政府に対し、「熱意を持って戦時性奴隷問題に対して包括的かつ公正な、永久的な解決策を講じる」ことを求めた。

 国連で人権関連の最高位置の要人である同氏は、今月31日に退任を控えており、本人名義の声明は最後になるとみられている(中央日報)。

 これに対して、菅官房長官は7日、「日本政府は道義的観点から最大限努力してきた」と反論し、慰安婦問題は日韓請求権協定で解決済み、という従来の政府の立場を改めて表明したという。

【ピレイ氏の声明内容とは】
 ピレイ氏は、自分の任期が終わろうとする今、「自身の権利のために闘ってきた勇気ある女性たちが、当然受けるべき賠償を受けることができないまま亡くなっていくのを見ているのが辛い」と述べている。今回の公式声明によって、慰安婦問題が解決されるべき優先事項として表面化した、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は報じている。

 日本政府が6月、いわゆる河野談話の「検証報告書」を発表し、河野氏が認めた「軍による慰安婦の強制連行」を裏付ける証拠は確認されなかった、とした。これを受け、「慰安婦は性奴隷ではなく、戦時中の売春婦だった」と公言する人もいる。同氏は、こうした「侮辱的な発言」が繰り返されているのに対し、「日本政府は公式に反論していない」と批判。現状への強い憂慮が、声明の背景にあるようだ。

【韓国紙「米国・国連は言葉でなく行動を」】
 韓国主要紙は、声明を大きく取りあげた。7月末に、国連人権委員会が日本に対し、元慰安婦への謝罪と賠償を勧告したこと、米国政府が元慰安婦と面談したことも挙げた上で、「慰安婦問題の解決法に転機が訪れるのではないか」(朝鮮日報)と期待をこめている。

 ただし、安倍政権は国連の一連の警告や批判について、「さほど気にしていない様子」と朝鮮日報はみている。さらに同紙は、朝日新聞が、慰安婦の強制連行を報じた過去の記事について、裏付けとなる証拠はなかったと訂正したことを取りあげた。これを受けて日本の右翼勢力が、慰安婦問題は「捏造」だと騒ぎたてていると報じ、日本国内の雰囲気も「世界の世論と逆行している」と批判する。

 これを踏まえ、同紙は社説で、国連と米国に、「日本政府に対し、言葉ではなく行動で慰安婦関連の蛮行の責任を認めさせ、真の謝罪をさせなければならない」と要求する。被害者女性の高齢化が進む中、問題解決に残された時間は少ない、と論じている。

Text by NewSphere 編集部