日本の対露追加制裁、米露双方から批判 露メディアは「美人すぎる検事も対象」と報道

日本政府は5日、クリミア併合やウクライナ東部の騒乱に関与したとみられる40人を対象とした資産凍結などの対ロシア追加制裁を発動した。

追加制裁対象者は直接関与していると判断された人物で、前ウクライナ大統領のヤヌコビッチ氏、日本未承認の「クリミア共和国」や「ドネツク人民共和国」の指導者たち、さらにネットで人気を博した美人すぎるクリミアの検事総長ナタリア・ポクロンスカヤさんも含まれている。

また、クリミアのガス企業「チェルノモネフチェガス(黒海石油ガス開発会社)」と石油供給会社「フェオドシヤ」の2社も対象とした。菅官房長官は「日本はウクライナ情勢の平和的かつ外交的解決を達成するために、G7諸国や国際社会との連携を継続していく」、と定例会見で語った。

しかしながら、このロシア政府要人が含まれていない日本の対ロシア追加制裁に、ロシア・トゥデイやニューヨーク・タイムズ紙が注目している。

【対ロシア追加制裁なのになぜロシア政府要人がいない?】
日本の対ロシア追加制裁に対して、ニューヨーク・タイムズ紙はアメリカの新たな制裁と比べ、より制限された“甘い”ものだと評している。

ロシアに対する欧米の制裁は、プーチン大統領の側近や政府当局者に加え金融、エネルギー、軍事技術産業をターゲットにした幅広い追加制裁を拡大し推し進めている。一方で、欧米の制裁とは対照的に日本の追加制裁は、既に欧米で制裁されている2社に加え、ロシア政府要人が含まれていない40人である。

この日本の制裁には「対ロシア制裁に関して熱心ではない」というメッセージが含まれている、とのキヤノングローバル戦略研究所の美根研究主幹(元外交官)のコメントをニューヨーク・タイムズ紙は掲載している。日本は西側と同じ価値観を共有していることを示す必要がある一方で、ロシアとの対話も維持したい思惑があるのでは、ともコメントしている。

安倍首相の考えには、北方領土問題は無論、液化天然ガス(LNG)などのエネルギー協力などもあるようだ。福島原発事故による代替エネルギーの一つとしてロシアのLNGに注目している。中国や韓国はロシアとの新たなエネルギー協力を進める中、日本だけが取り残されたくないのでは、との法政大学日ロ関係研究所の下斗米教授の見解をニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

また、美根研究主幹は主要7カ国(G7)の連携と日露関係の維持も大事だが、地政学的にも日本政府が悩まされていることが浮き彫りになったとも伝えている。

【ロシアと熱心な外交努力をしてきた安倍首相の努力が水の泡?】
安倍首相は2012年に首相に返り咲いて以来、プーチン大統領とは5度、首脳会談を行っている。中国・韓国との首脳会談が一度も実現していないこととは対照的である。

今年2月、ソチオリンピックの開会式に各国の首脳が欠席を決めている中、安倍首相は参加を決めプーチン大統領と日露首脳会談を行っている。その際にプーチン大統領が年内に訪日することで合意していたようだ。ロシア外務省は、8月にも日露外務次官級協議でプーチン大統領の訪日などについて協議する予定だったが、日本の対ロシア追加制裁が原因で、予定されていた協議が延期されることになった、と日本を批判している。

また、「非友好的、かつ短絡的な措置であり、露日両国間関係全般を損なう」と評し、「日本政府の一連の反露的な制裁の結果、こうした会談は不適切だと考える」とするロシア外務省の声明をニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。日程も依然決まっておらず、先行きは不透明なままである。

【美人過ぎる検事総長も追加制裁対象者に】
ロシアのニュース専門局ロシア・トゥデイは、美人すぎる検事総長として一躍有名になったポクロンスカヤさんも、今回の日本の制裁のブラックリストにアップされた、と伝えている。

同紙によると、人気の発端は、ポクロンスカヤさんが検事総長として就任した記者会見模様がYouTubeでアップされたことだ。わずか三日で再生370万回を超え、その人気が不動のものとなり、キャラクター化までされている。ロシアでは彼女のことを「nyasha(かわいい人)」の愛称で親しまれているようだ。また、若い検事からは「Nyash-Myash(かわいい)」との愛称で呼ばれているようだ。

今回の追加制裁対象者にリストアップされたことを知ったポクロンスカヤさんの反応は今のところないようだと同メディアは伝えている。

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Text by NewSphere 編集部