「ロシアへ売却予定のフランス軍艦、日本が買うべき」米紙主張 対ロ制裁慎重な安倍政権への皮肉か

プーチン大統領

 ウクライナ情勢をめぐって日本政府がロシアに対し追加制裁を決めたことについて、29日、ロシア外務省は、「非友好的で近視眼的な歩み」であり、両国の関係に損害をもたらすとする非難声明を出した。

 これより先、ロシアのラヴロフ外相が、プーチン大統領の秋の訪問は日本次第だとの考えを表していたが、30日、菅官房長官は、現時点で何も決まっていないとの見方を改めて示し、様々な要素を総合的に勘案した上で検討することになると述べた。

【対ロ制裁で日本が失うもの】
 ワシントン・ポスト紙は外交問題評議会(CFR)のスミス氏の見方を伝えている。

「安倍首相がロシアに対して制裁を行うことの最大のリスクは、外交的というよりは、むしろ経済的なものだろう。もし、追加制裁を行えば、ますます依存度が高まっているロシアからのエネルギー入手が困難になるだろう」

 同紙によれば、目下日本が準備中の制裁案や、アメリカ・EUの制裁策は、日本のビジネス界を狼狽させているという。ロシアとのエネルギー開発プロジェクトが危うくなっているのだ。

 日本最大のコングロマリットに属する某企業で、ロシアとのジョイント・ヴェンチャー(JV)を担当する匿名氏は、JVごとに受ける影響度合いに関して、内部レビューを開始したという。

「たとえ、日本の制裁による影響がなくても、日本企業の多くはアメリカによる制裁に注目している。アメリカでビジネスを行う我々にとって、日米関係は重要だからだ」

 アメリカで営業を行い、ロシア向けJVに投資している、日本のある銀行の担当者も、アメリカとロシアのどちらとビジネスするか選択を迫られ、頭を抱えている。

「日ロ貿易の支払いへの影響も懸念される」と、ある企業の広報担当者は語る。

【対ロ制裁で日本が得るもの】
 これに対して、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の論説は、日本にはプーチン大統領への制裁ともなり、同時に、軍備増強することも可能な手があるという。

 すなわち、ウクライナ問題発生前に結ばれた契約のために、フランスがロシアに納入することになっている、ミストラル級強襲揚陸艦2隻を日本が買えばいいのである。これは自らの行動の報いだというプーチン大統領へのメッセージになるし、ロシアの軍備増強を抑えるためのEUによる対ロシア武器禁輸も実効的となり、フランスも道を踏み外さずにすむという。

 外交的に見ても、フランスのミストラル級艦納入問題に答えを示すことで、安倍首相はリベラルな国際秩序の維持にコミットする世界的なプレーヤーであることを十分に証明できるだろう、とウォール紙は述べている。

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Text by NewSphere 編集部