モディ印首相、訪日延期の真の理由は“日本重視” 地元紙はさらなる親密化を予想

 安倍政権とモディ政権の誕生以来、両首脳の相性の良さも相まって、日本とインドの政治的・経済的関係が日増しに深まっている。フォーブス誌によれば、おもな日本企業は今、将来の最も魅力的な国際市場はインドだと考えているという。
その一方で、今月初めに予定されていたモディ首相の訪日が延期され、日印関係に水を差した格好となった。しかし、一部の現地メディアは、延期の真相は首相が日本との関係を重視したがためのやむを得ない措置だったと報じている。

【日印のニーズが合致】
 野村証券や日本の国際協力銀行が行った調査によれば、日本の企業・投資家は、特に10年単位の長期的な展望では、インドをNo.1の魅力的な市場だと見ているという。これを報じたフォーブス誌の記事は、「対する中国市場の魅力は、労働賃金の上昇と不透明な法制度により下がっている」と記している。

 日印の接近は、日本のインフラ輸出拡大の動きとインドのニーズが合致した自然な流れだと同誌は見ている。「日本は2020年までにインフラ関係の受注を3倍の3000億ドルまで伸ばすことを目標に掲げている。対するインドは高速鉄道をはじめとする近代的な都市インフラを築く準備を進めている」と記す。資金と技術的なノウハウの両方を提供できるのも、日本の強みだとしている。

 ただし、現状では日印貿易は日本全体の1%、インド全体の2%しかない。しかし、安倍首相とモディ首相の経済再生政策には共通する部分が多くあり、2011年に結ばれた日印経済連携協定(CEPA)も、両国の経済再生政策としっかり連動しているという。両首脳の思惑通りに事が進めば両国の協力関係も必然的に高まると、フォーブス誌は見ている。

【インド側の準備不足にモディ首相が激怒】
 そのモディ首相だが、7月4、5日に予定していた訪日は延期となった。表向きの理由は国内の予算編成・国会質疑と日程が重なってしまったため、とされているが、実は日本との共同プロジェクトへの首相の強い思いが背景にあったようだ。インド紙エコノミック・タイムズが、政府筋が明かした裏話を披露している。

 それによれば、当初の訪日予定日の2週間ほど前に、日本側から日印の間で計画されている共同プロジェクトのリストが、インド首相府に送られてきた。それを受け、関係省庁の担当者を集めて会議を開いたところ、一連のプロジェクトに対するインド側の準備がまったく進んでいないことが判明。リストには、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想、原発建設計画、高速鉄道網設置構想など、モディ政権が特に重視しているプロジェクトも含まれていたという。

 これに、モディ首相は「(安倍首相との)記念撮影のためだけに東京に行けというのか」などと激怒。拙速な訪日日程を立てた関係省庁を非難した。そして、訪日で具体的な成果を挙げるには最低でも2ヶ月の準備機関が必要だと、延期を指示したという。同紙は、リスケジュールされた訪日は、8月末か9月初めになる見込みだとしている。

【国際取引の土台作りでも日本が一歩リードか】
 そうしたドタバタ劇の一方で、現場サイドではビジネスの土台作りが着々と進んでいるようだ。インド紙ビジネス・スタンダードは、外国籍企業との取引において障害となる税制の違いなど調整する二国間の事前確認制度(APA)を、インドは初めて日本と結ぶことになるだろうと、報じている。

 APAは、国境を超えた企業取引の際に、取引が行われた国と企業が属する国の税制や税額の違いによる混乱を避けるため、それらの算定方法の妥当性について、税務当局から事前に確認を受ける制度。1国の税務当局からのみ確認を受ける「国内APA」と2ヶ国の税務当局から受ける「二国間APA」があるが、日印で締結しようとしているのは、よりスムーズで確実な取引が可能とされる「二国間APA」だ。

 同紙によれば、インドとの「二国間APA」の締結に最も熱心なのが日本で、イギリスが続く。これに対しアメリカは、自国の税基準を強く保護する立場から、「国内APA」にこだわっているという。あるインドの税務当局者は、同紙の取材に対し、「常に法廷で争うことを考えている欧米企業と違い、日本企業は争いを好まない。日本は訴訟社会ではないのです」と、相互主義の構築において、欧米よりも日本を優先したい考えを示したという。

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Text by NewSphere 編集部