安倍首相、“危険な賭け”の改憲は我慢 それでも任期中にやり抜くだろうと海外専門家予想

 安倍首相の集団的自衛権行使容認に向けた動きが鈍り始めている、と海外各紙が注目している。近隣国から批判や、国内の大幅な支持率低下に怯んだのでは、というのが大方の見解のようだ。

【海外の反応】
 7月1日の憲法解釈改正の発表は、戦後70年の体制に終わりを告げる歴史的な決定だ、と『The Nation』は述べている。これに対する海外の反応について、この決定から最も恩恵を受けるのはアメリカだと同メディアは言う。アフガニスタンや中東における軍事活動が疲弊しつつある中、同地域での影響力を保つのに日本の支援は大きな助けになるということだ。

 また日本との防衛連携強化を進めているオーストラリアも日本の動きを支持している。中国と係争水域を抱えるフィリピンも、日本の軍拡は同様の問題を抱える国のサポートに役立つ、と評価している、とニューズウィークは伝えている。

 逆に猛抗議を起こしているのが中国だ。新華社通信は安倍首相の憲法解釈について「戦争をふまえた戯れ言」と伝えている。また同メディアは「警戒しているのは中国だけではない。同じく日本に侵略された過去をもつ韓国も同様だ」と述べている。

【国内の反応】
 安倍首相はオーストラリア国会で「日本は第二次大戦の過ちを決して繰り返さない」と演説した。これは中国などの近隣国に向けたメッセージであると同時に、日本国内の反対派をなだめる目的であったとウォール・ストリート・ジャーナル紙(ウォール紙)は報じている。

 11日に発表された読売新聞の世論調査によると、安倍首相の支持率は先月の57%から48%に下落し、初めて50%を下回った。また「集団的自衛権に関する安倍首相の判断を支持するか」という質問については、51%が支持しないと回答、支持派の36%を反対意見が上回った。「保守派で、比較的安倍政策の支持率の高い」同紙でこの結果であるとウォール紙は伝える。さらに国内各地で、大規模な抗議活動やデモが行われた。

 こうした国内外の動きに怯んだのか、安倍首相の憲法解釈改正への動きが急に減速した、と海外各紙は伝えている。これについて安倍首相は日経新聞のインタビューで「このような極めて重要な決定に関しては、少し時間がかかるものだろう」と発言している。また菅官房長官は「来年くらいまで時間をかけて討論を重ねるべき」と14日に発言しているとウォール紙は報じている。

【それでも首相はやるだろう、と海外紙】
 7月1日の決定はかように多くの抗議批判を引き起こした。しかし安倍首相について「歴代首相のなかで、彼の祖父(故・岸信介元首相)以来のタカ派」と表現しているニューズウィークは「第二次世界大戦後、”アメリカ的”だったアジア太平洋地域が、中国の台頭によりパワーバランスが変わりつつある今、安倍首相の考えは全くもって正しい」との見解を示している。

 スタンフォード大学のダニエル・スナイダー氏は「この重要で歴史的な変化となる取組みを世論の大部分が支持していないのは以前からのことだ」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。2007年最初の政権時、もっと大々的な憲法改正をしようとした安倍首相は、首相職そのものを失うという代償を伴った。

 しかしその後、日本は中国の台頭に脅かされ、近隣海域で領有権問題を抱えることとなった。スナイダー氏は「安倍首相の取組みは危険な賭けだが、それでも首相はやり抜くと固く決意しているだろう」と述べている。

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Text by NewSphere 編集部