韓国、竹島の「防衛」明言をオバマ大統領に求める動き 「尖閣に安保適用」発言の影響か

竹島

 来日中のオバマ大統領は、24日の共同記者会見で尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象であることを明言した。また、TPP交渉の難航で発表が遅れた日米共同声明でも、尖閣が日米安保条約の適用対象であることと、米政府は日本の集団自衛権行使検討を支持する旨であることが折り込まれている。

【大統領の支持で勢い】
「有事の際アメリカは日本を防衛する義務を有する」という立場については、これまでもヘーゲル国防長官などから正式に発表されてきた、米政府の見解である。

 しかしそれでも、尖閣諸島について安保条約の適用対象であるとの明言が、今回初めて大統領から得られたのは、日本にとって極めて重要なことだ、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 同紙によると「この言葉が”大統領から得られた”という事実が日本にとって大きな心理的効果がある」と細谷雄一教授(慶應義塾大)は分析しているという。安倍首相にとっても、大統領からの言葉は心強いものになっただろう、との見方を同紙は示している。

 安倍首相は共同記者会見で「オバマ大統領の情熱と米国を信頼しています」と述べている。

【気になる中国への配慮】
 しかし、すべてがうまくいったわけではない。両国の共同会見に影を落としたのが「中国への配慮」だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘する。

 オバマ大統領の「安倍首相には、事態を悪化させるよりも平和的に解決する事が重要であることを強調した。言辞は控えめに、挑発的にならないよう注意し、中国と日本が協力していける道を探ってほしい」という発言について、同紙は「安倍首相の靖国参拝批判を婉曲にほのめかした」との見解を示している。

 またニューヨーク・タイムズ紙も、「オバマ大統領の1番の願いは領土問題の平和解決のように見えた」と報じている。大統領は「もし領土問題に関して、事態の悪化を進めるならば、とんでもない過ちとなるだろう」と発言。尖閣諸島のことは「岩」と表現したが、これも生産的な関係となり得るはずの日中関係が、真逆の方向へと進まないよう促すための配慮、と同紙は分析している。

【さて、その見返りは?】
 総合的に見れば、安倍首相は「最も欲しかったもの」を獲得できたと言える、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は評している。ニューヨーク・タイムズ紙も「安全保障の確約が得られた日本のほうが戦利品が大きい」と述べている。

 ならば、そのお返しにアメリカは何を得られるのか。ブルームバーグの分析によると、いま何よりも緊急にアメリカが欲しいのは「さらなるロシア制裁強化への同調」ではないか、という。

 アジア基軸策を掲げるオバマ大統領にとって、TPPの譲歩は確かに素敵な手土産となり得るだろう。しかし、ウクライナ東部での事情が悪化の一途を辿る現在の情勢を考えると、目先の関心としてはそちらのほうが優先度は高いかもしれない、と同誌は指摘する。

【中国・韓国の反応】
 この発表を受け、中国国営新華社通信は「オバマ大統領の支持を得られたことが安倍をさらなる軍事行動へと調子づける」と報じている。同メディアは「オバマの防衛義務への誓いで、アメリカは日本の右翼派に乗っ取られたようなものだ。日米の軍事同盟は戦闘マシンと化し、アジア太平洋地域および世界全体の平和と安定を脅かすだろう」などという、あからさまに飛躍した論調で抗議を表している。

 また韓国の中央日報によると、韓国政府はこの声明を受けて、竹島(韓国名で独島)が米韓相互防衛条約の適用内である立場を表明した。与野党議員は、来韓するオバマ大統領に「独島についても明確に立場を表現する」よう要求すべき、との意見を示しているという。

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Text by NewSphere 編集部