オバマ米大統領の「尖閣に安保適用」明言は、予想外…海外紙は対中配慮で慎重姿勢を想定

 23日、アメリカのオバマ大統領が来日する。数ある問題の中で焦点のひとつとみられているのが、安倍政権が進める、集団的自衛権の行使容認に関する米政府の反応だ。緊張の高まる領土問題と深く関わる案件だけに、注目が集まっている。

【米政府が支持を明言との報道】
 読売新聞は、オバマ大統領から集団的自衛権の行使容認について支持を表明する言葉が、書面インタビューにて得られた、と23日付で報じている。

 同紙によると、オバマ大統領は、集団的自衛権の行使容認に向けた安倍首相の取組みについて「国際的な安全保障に対するより大きな役割を果たしたいという日本の意欲を、我々は熱烈に歓迎している」と回答したという。また尖閣諸島についても、「日米安全保障条約第5条の適用範囲内にある」と明言したとのことである。なお第5条は米国の対日防衛義務を定めた条文である。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(ウォール紙)も、米国防省は「安倍首相の集団的自衛権行使容認に向けた取組みを歓迎している」と21日発表した、と報じている。同紙によると、軍事費を拡大している中国に対抗できるよう、日本はより軍事強化すべき、というのが米側の主張とのことである。さらにアメリカだけでなく、中国と領土問題を抱えるアジア各国も、日米が安全保障面で結束を強めることは大賛成だ、と同紙は報じている。

【軍拡がもたらす軋轢】
 しかし、日本に遺恨を持つ中国と韓国は、こうした動きは軍拡だ、という疑念につながっている、とウォール紙は述べる。中国国営メディアは「安倍首相の憲法再解釈は軍国主義への回帰」と頻繁に報じているという。

 さらに、日本の軍拡指向がアメリカにとっても懸念となる面もある、と同紙は述べる。というのも、日本では軍拡の必要性を「アメリカが弱くなっているから」と見る向きもあるからだという。加えて、アメリカの関心はアジアより中東やウクライナに向けられているのではないか、と日本をはじめとするアジア各国が不安を抱いていると同紙は指摘する。

 同紙は、軍事強化をアメリカ依存からの脱却と捉える日本の例として「中国の力が強まるにつれ、相対的にアメリカの影響力が弱まっている。いかに戦争を回避するか、今こそ我々自身で対処する方法を真剣に考えるべきだ」、と語る自民党の石破茂幹事長の言葉を挙げている。

【日本は自軍自衛へ?】
 英ガーディアン紙は、日本が19日、尖閣諸島に近い与那国島で新たな自衛隊基地建設に着手したことに触れ、「日本がアメリカへの不安の表れとして、40年以上ぶりとなる軍事拡大を見せた」と報じている。

 中国との領土問題についても、これ以上中国との関係に悪影響をもたらすことを恐れ、今のところ米政府は日中どちらの側も取っていない、と同紙は指摘する。

 21日、米政府は「アメリカは日本を守るという義務を常に遵守する」と再度強調しているが、それでも今回の訪日で発表される予定の共同声明に「尖閣諸島」に関する明言は含まれないだろうと日本のメディアは見ている、と同紙は伝えている。

 今回の訪日では、オバマ大統領が日本の軍事再構築支持を名言するかが正念場、とウォール紙は述べる。「オバマ大統領は”集団的自衛権”という言葉は使わないかもしれないが、それでも安倍首相の努力を認める必用はある」と戦略国際問題研究所のマイケル・グリーンは分析しているという。

 総じて海外紙は、米国は中国への配慮から、日本に対して慎重では、という論調である。しかし、読売新聞へのインタビューで、オバマ大統領は、尖閣諸島が日本の施政下にある(日米安保条約の適用範囲にある)ことを明言した。集団的自衛権に関して、オバマ大統領がどのような声明を発表するのか、注目される。

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Text by NewSphere 編集部