安倍首相、靖国神社に真榊奉納 直接参拝しなくても中韓激しく非難

靖国神社

 安倍晋三首相は21日、靖国神社に祭具の真榊(まさかき)を奉納した。

 真榊とは、神前に供えるサカキの鉢植えである、と「kotobank」は定義している。一方、玉串料とは、神社にお参りした際やおはらいを受けた際の謝礼として、金銭を包んで奉納するものである。

 新藤義孝総務相や古屋圭司国家公安委員長兼拉致問題担当相など、内閣閣僚による靖国参拝が続いている。しかし、安倍首相は、自らの参拝は見送った。中国、韓国との関係や、東アジアの不安定化を懸念する米国に配慮した、と時事通信は報道している。

 しかし、中国と韓国は、戦争犯罪者が250万人の日本人戦没者と共に祀られている靖国神社を日本の植民地主義の象徴と見ている。中韓両国は、安倍首相による真榊奉納を激しく非難した。

【靖国参拝は東アジアの緊張要因】
 中国外務省の秦剛報道局長は、日本側に抗議したことを明らかにし、安倍首相の行為は日本による「誤った歴史認識」を反映していると述べた。

 韓国外務省は、「安倍首相は、靖国神社に奉納することにより、日本の植民地主義と侵略戦争を美化している」と抗議した。

 安倍首相による真榊奉納は、中国および韓国だけでなく、アメリカとの関係における緊張要因と、とニューヨーク・タイムズは指摘している。安倍首相による12月の靖国参拝はアメリカ政府から公に批判された。中国が東アジア地域におけるアメリカの支配に対抗しようとしている時期に、同盟国である日本が歴史問題を下手に扱って孤立するのでは、とアメリカは恐れている。

【中国による日本船舶差し押さえ】
 東アジア情勢にとってさらに悪いことに、20日、中国当局が商船三井の大型輸送船を差し押さえた。

 船舶の差し押さえは、日中戦争の直前、商船三井の前身となる海運会社に船を貸し出した中国企業の関係者が、未払いだった賃貸料や損失賠償を求めた裁判に絡むものである。商船三井の敗訴が確定したが賠償に応じていないとして、中国当局が異例の差し押さえに踏み切った。

 21日、菅義偉官房長官は「極めて遺憾だ。中国の日本企業全般に萎縮効果を生みかねない。」と、中国政府に抗議した。

 しかし、差し押さえによる影響は限定的、とロイターは指摘している。実際、トヨタ自動車の上級経営幹部は、21日、中国における生産能力を大きく拡大する計画を明らかにした。

 アメリカのオバマ大統領のアジア訪問が、23日の日本を皮切りに、スタートする。アジア訪問の焦点の一つは、同地域における最も親密な同盟国である日本と韓国の連携を深めること、とニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。日・韓・中の関係動向に注目が集まっている。

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Text by NewSphere 編集部