対中国機スクランブル、過去最多の415回 日中関係悪化の象徴と海外メディア注目

 防衛省は9日、航空自衛隊の戦闘機の中国機に対する緊急発進(スクランブル)が昨年度、過去最多になったと発表した。海外メディアもこれを報じ、尖閣諸島の領有権問題などを巡って緊張が続く日中関係を憂慮している。

【中国機の行動範囲が拡大】
 昨年度、航空自衛隊は中国機に対して415回スクランブルをかけた。これは前年度を36%上回り、防衛省の発表が行われるようになった2001年以来、最多を記録した。スクランブルの総数は810回。前年度の516回を大きく上回り、冷戦終結後最多となった。対中国機がそのうちの51%を占め、残りはロシア機へ386回、北朝鮮機に対する9回だった。

 9日付のロイターは、中国機は昨年度来、その行動範囲を広げたとする防衛省関係者の見方を伝えた。その一例として、Y-8早期警戒機が昨年7月、初めて沖縄本島と宮古島の間の公海上空を通過し、同じルートを引き返した事例を挙げている。

【中国国防相「絶対に領有権を譲らない」】
 ロイターは、尖閣問題に加え、安倍晋三首相の靖国参拝などで歴史認識問題がこじれ、日中関係が悪化したことが対中スクランブルの増加につながっていると報じている。さらに、中国が昨年11月に東シナ海上空で防空識別圏を設定したことも、緊張関係を煽ったと論じる。

 ブルームバーグは、8日に会談した中国の常万全国防相とアメリカのヘーゲル国防長官の尖閣問題に対する見解を伝えた。報道によれば、常国防相は会談後の記者会見で、日本が尖閣諸島周辺で挑発的な行動を取り続けているとして、安倍首相を名指しで非難した。そのうえで、中国は絶対に領有権を譲らないと主張した。

 一方、ヘーゲル国防長官は会談で、有事の際はアメリカは日本を守ると、あらためて立場を伝えたという。そして、常国防相と同席した記者会見で「両国は領土問題を平和的に、責任を持って解決しなければならない」と述べた。

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Text by NewSphere 編集部