韓国紙“安倍首相は「戦争加害国」から「拉致被害国」へイメージを変えようとしている”

 外務省は16日、1977年に北朝鮮に拉致された横田めぐみさん(当時13歳)の両親である滋さん(81)・早紀江さん(78)夫妻が、26歳になった孫と、10日から14日にかけて、初めて面会したと発表した。

 モンゴルのウランバートルで横田夫妻が面会を果たしたのは、キム・ウンギョン(ヘギョン)さん。キムさんは、めぐみさんと、めぐみさんの夫で韓国人拉致被害者である金英男(キム・ヨンナム)さんとの娘だ。

 今回の面会は、今月、中国の瀋陽で開かれた日朝赤十字会談に伴う非公式の政府間協議で合意されたものだという。

【拉致問題】
 北朝鮮は2002年に、70年代から80年代にかけて13人の日本人をスパイの訓練を手伝わせるために拉致したことを認め、うち5人を帰国させた。この際、横田めぐみさんを含む8人は既に死んだとされ、2004年にはめぐみさんの遺骨が届けられた。しかしDNA鑑定の結果、別人のものであると判明。横田夫妻はめぐみさんの生存を信じ続けている。

 日朝での拉致問題に関する公式協議は、2012年12月に北朝鮮が人工衛星と称する大型ミサイルを発射して以来、中断していた。

【韓国の不信感】
 韓国大手紙の中央日報は、今回の面会を機に、拉致問題の解決に向けた両国間の交渉が急速に進展する可能性が高くなったと述べる。

 一方で、韓国の外交当局者が「今回のことに関した事前説明を日本政府から全く受けられなかった」と語ったとし、日米韓外交が行き違う中、北朝鮮との単独交渉で突破口をつくろうとする日本の動きに、韓国政府の警戒心も大きくなりつつあると報じる。

【韓国メディアの無理筋な批判】
 朝鮮日報によれば、拉致問題の突破口を切り開くため安倍首相が使った手段は、密使を使った秘密外交だったという。安倍首相は昨年5月、飯島勲・内閣官房参与を平壌に密使として送った。この時も韓国と米国に事前の連絡がなかったため「対北朝鮮政策の協力関係を壊した」との批判があったという。

 2004年には当初一時帰国の予定だった5人の拉致被害者を完全帰国させ、安倍氏は北朝鮮に対する経済制裁でも自ら先頭に立った。これをきっかけにそれまでの「普通の世襲政治家」から「信念の政治家」へのイメージチェンジにも成功したと同紙は見る。

 このように、安倍首相が拉致問題に執着するのは、戦争を引き起こした「加害国・日本」から「国民が拉致される被害国・日本」へと国のイメージを変えるため、との見方もあると朝鮮日報は報じている。

めぐみへ 横田早紀江、母の言葉 [amazon]

Text by NewSphere 編集部