日本が進むべきは「平和」か「軍拡」か? 海外メディアの主張も両極化

 集団的自衛権とは、同盟国が武力攻撃を受けた際に、日本が直接攻撃を受けていなくても、自国への攻撃とみなして反撃できる権利のことをいう。日本は憲法第9条の定めるところにより、この集団的自衛権の行使はできないと解釈されている。

 ところが昨今、安倍首相がこの集団的自衛権の行使に向けて動いている。北朝鮮や中国との関係に緊張が高まっていることを理由に、平和憲法の「新たな解釈」ひいては「改憲」を目指すこの政策について、海外メディアが論争を繰り広げている。

【軍拡派のウォール・ストリート・ジャーナル】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(ウォール紙)は、集団的自衛権に賛成する持論をコラムで展開している。同紙によると、その理由は「民主主義の原則は、専制主義の脅威に対抗し戦後世界を構築する基軸として共に協力すること」だからだそうだ。つまり北朝鮮のような国の暴走を防ぐには、民主主義の国同士が「軍事的に」協力しなければならない、ということだ。

 しかし現状の日本では、仮に北朝鮮のミサイルがアメリカに向け日本上空を飛行しても、日本は黙って見ているしかない。攻撃は憲法第9条に抵触するからだ。日米安全保障条約では、日本が他国の攻撃を受けたら米軍は反撃しなくてはいけないのに、日本にその反対の義務はないというわけだ。

 さらにアジアにはNATO(北大西洋条約機構)のような軍事同盟がない。ゆえに、同紙が脅威と見る「共産主義の拡大」は、アメリカが各国との2国間協定によってなんとか最小限にとどめている次第で、これでは全く心もとない、というのが同紙の主張である。

 日本は戦後世界平和に貢献し、過去70年、過ちを償ってきた。そろそろ「アジアのリーダーとして機能しうる普通の(軍隊能力を持った)国」に戻るべき時がきた。同紙は最後、このように主張をまとめた。

【フォーブス誌が猛反撃 ”WSJは盲目的に軍国趣向”】
 一方フォーブス誌は、ウォール紙のコラムを痛烈に批判した。

「東アジア諸国の人々が地域に一番願っていることは何か。考えるまでもない。調和と平和と安全だ。しかしウォール・ストリート・ジャーナルの編集者はそうは見ていないらしい。そればかりかその思いを理解しようともしていない」と切り出した。

 同誌は、そもそも平和憲法の「解釈」が自衛隊の誕生を許したこと自体が明らかに違憲であると主張する。にもかかわらずアメリカは日本にもっと武器買え、軍隊作れと圧をかけ、しまいには集団的自衛権まで認めさせる方向で動いている、と現在の情勢に懸念を表した。

 同誌はさらにこう指摘する。日本は、アメリカと違って近代戦争の恐ろしさを身をもって知る国だ。平和を願い戦争を嫌う日本人は、多くが集団的自衛権に反対している。その「一般人が軍国主義を抱いていない」ことこそが、ウォール紙の気に入らない点なのだ、と皮肉をあらわにした。

 日本の辿るべき道は、平和の維持と、米中関係における中立だ。日米の軍事強化ではない。安倍首相の「集団的自衛権」は阻止されなければならない。ついでにウォール紙の冷戦時代の亡霊みたいな編集者も引退してほしい。同誌はこう締めくくり、最後まで真っ向からの対立姿勢を崩さなかった。

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国

Text by NewSphere 編集部