TPPに「119の未解決問題」 ウィキリークス暴露

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉は、10日までシンガポールで「4日間の重要な会議」に入っている。甘利経済担当相が舌癌と診断されたため、日本からは西村康稔副大臣が出席している。

 アメリカは年内の妥結を目標としているが、各紙の報道によれば間に合わなさそうである。とはいえアナリストらは、世界貿易機関(WTO)の交渉が一定の成果に達したことなどから、「オバマ大統領による4月のアジア訪問中か、その直前」にはまとまると見ているという。ただ、TPPは秘密交渉であるため、実際の交渉経過は不明だ。

【頑固なのは誰?】
 日本は米や牛肉などの分野を「聖域」とし、アメリカが求める全面関税撤廃を断固拒んでいる。西村副大臣は「我々の側では、国会決議上、妥協できない特定の部分があります」「我々はこれをアメリカに何度も説明しており、柔軟性を求めております」などと証言している。ある国の高官は「日本はどの市場交渉でも中心に居ます。誰にとっても最優先事項なのです」と評した。

 一方で、ロシア・トゥデイは、アメリカこそ交渉遅れの原因だと強調している。ウィキリークスが公表した漏洩文書によると、「アメリカが多数の争点に妥協することを拒否したことで」119の未解決問題が生じていることが明らかになった、と同紙は報じた。ある参加国は、アメリカが「その提案において何ら柔軟性を示しておらず」、「最も大きな障壁の1つとなっている」と書いていたという。文書によれば「今まで知覚できる実質的な動きはアメリカ側になかった」が、「アメリカは今週できるだけ多くの問題をクローズしようと多大な圧力を及ぼして」おり、アメリカ側の焦りを示しているという。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、日米間では他に、アメリカ産業界のロビー活動が強い自動車関税も焦点となっていることや、オーストラリアがアメリカの砂糖市場に参入しようとして、対立点になっていることなども報じている。

【貿易以外に自由への懸念も】
 また各紙は、TPP交渉が紛糾している大きな原因として、知的財産権問題や国有企業問題を挙げている。国有企業の力が強いブルネイやマレーシアなどについては、民業圧迫の問題が特に重大だという。

 知的財産権については、医薬品などの特許拡大や、企業が直接国家相手の法的闘争を挑むための裁判所設置などが、新薬の権利を守りたい先進国と、それを使う立場の新興国の間での摩擦要因となっている。また、インターネット一時ファイルの作成を禁じるなどの「極端なオンライン検閲」も問題視されている。

Text by NewSphere 編集部