中国・米国への配慮か? 安倍首相が靖国参拝を見送った理由

靖国神社

 終戦記念日の15日、安倍首相は靖国神社を参拝しなかった。一方で、自民党総裁として、私費で玉串料を納めた。

 閣僚からは、新藤義孝総務相、古屋圭司拉致問題相、稲田朋美行革相の3名が参拝に訪れた。古屋大臣は、「戦没者をどのように祀るかは純粋に国内のことであり、他国から批判や干渉を受けるものではない」と語った。

 これに対し、中国外務省の劉振民次官は15日、木寺昌人駐中国大使を呼び、「強烈な抗議と厳格な非難」の意思を表明した。韓国では、朴槿恵(パク・クネ)大統領が、「日本は過去の問題を直視する必要がある」と式典で述べたが、靖国参拝については明確に触れなかった。

 海外紙は、安倍首相が参拝を見送った背景などについて報じている。

【安倍首相の現実的な判断か】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、中国とのこれ以上の関係悪化を避けるために、安倍首相は参拝を見送ったとみている。尖閣問題などのハイレベル交渉を進めるための現実的な判断、という論調だ。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、加えて、米国の意向に言及している。参拝を批判する韓国と日本の関係が悪化することで、中国や北朝鮮を含め、地域の緊張が高まることを避けたいのではないか、と分析している。
 
 ただ、安倍首相は、この先参拝するかしないかを明言せず、閣僚の参拝についても制限しなかった。また、戦没者追悼式の式辞では、「不戦の誓い」や「近隣諸国へのお詫び」について明確に触れなかった。フィナンシャル・タイムズ紙は、保守派が批判する「謝罪外交」を避ける意図があったのではとみている。同紙は、安倍首相はむしろ、挑発を強める中国から自国を守ることを強調していた、と報じている。

【専門家の視点は】
 フィナンシャル・タイムズ紙によると、船橋洋一氏(元朝日新聞主筆)は、安倍首相が自らのナショナリズムを抑制し、現実的に判断したとみている。これは中韓に対して、「自らを抑制できる、信頼に足るリーダー」だというメッセージになるとも分析している。

 米国のメネンデス上院外交委員長(民主党)も、来日時に、日本のこの地域での役割を考えれば、(安倍首相の)参拝しないという判断は評価できる 、という旨を述べていた。

 なおウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、参拝者は合計17.5万人で、昨年の16.1万人を上回った。同紙は、中国との緊張が高まっていることが影響していると報じている。

Text by NewSphere編集部