フランス人はなぜマスクをつけないのか? 「感染防がない」の奥にある本音

Yoan Valat / Pool via AP

 新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、日本では、すでに外出時のマスク着用が「常識」となっている。ところが、同じく感染が深刻なヨーロッパでは、いまだにマスクをした人を滅多に見かけない。それどころか、ネットに散見されるように、マスクを着用したイタリア議員がひどい野次を浴びたり、スイス評議会がマスクを着けていることを理由に議員に退場を命じたりという「マスク差別」まで発生している。この違いはいったいどこから来るのだろうか。

◆「マスクは感染予防に意味がない」
 フランス人になぜマスクをつけないのかと尋ねれば、一番に彼らが挙げるのは「マスクの着用は感染を防がないから」という理由である。

 3月2日付のル・モンド紙にあるように、フランス厚生大臣オリヴィエ・ヴェランは、マスクの着用は「リスクがあるとみなされたゾーン(中略)に滞在した人が、帰国してから2週間」と、「感染者」にのみ勧められると当初より発言しており、「リスクあるゾーンへ渡航していない非感染者のマスクの着用は勧められない。効果が実証されていないからである」とも明言している。

 また、同記事はサージカルマスクとFFP2マスクの比較もしている。それによれば、サージカルマスクは「マスク着用者の咳やくしゃみなどから、まわりの人を守ることができる(中略)(が、)着用者自身は守らないため、健康な人が感染を避ける用途で用いるのには効果がない」のに対し、FFP2マスクは「第三者から呼吸器経由で感染しないよう(着用者を)守ることができる」。

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Text by 冠ゆき