学校でトイレに行けないトランスジェンダーたち 米国の教育現場が抱える問題

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 GW最終日の5月7日に、代々木エリアでLGBTQの人々をサポートするための行進があったことをご存じだろうか。LGBTQとは、lesbian/ gay/ bisexual/ transgender/ queerの頭文字を意味し、性的マイノリティを示す言葉だ。queerは、LGBTの区切りから溢れる性的マイノリティを指している。日本でも徐々に彼らの存在が認知され、理解を深めようとする動きが増えている。しかし、まだ多くの一般的理解は得られていないのが現状だろう。

 マイノリティの人権に敏感と思われるアメリカでも、まだ多くの課題がある。本記事では、Movement Advancement Project(MAP)という性的マイノリティ問題を扱うシンクタンクが、GLSENという教育現場におけるLGBTQの支援を目的とした団体と共同発表したレポートを紹介しながら、その実態を考えていきたい。

◆トランスジェンダーの青少年が学校で抱える不安と不快
 まず、トランスジェンダーの人々は直面する課題の類似からLGB(Lesbian, Gay, Bisexual)という人々とひとくくりにされているが、根本的性質は少し異なる。LGBの人々は性的嗜好に基づいたマイノリティであるが、トランスジェンダーは自分の生物学的性と内面的性が一致しなかった人々である。

 アメリカの青少年(13~17歳)のうちトランスジェンダーは総勢15万人以上いるとされている。そうした多くのトランスジェンダーの青少年は、70%が学校の公共トイレを利用するのを避けており、また時に水分の摂取も意識的に減らしていることが調査で明らかになった。他にも、学校で自分の内的性別に沿わない更衣室やトイレの利用を強要されているケースが60%と半分を上回った。

◆法的サポートの必要性
 トランスジェンダーの学生たちは、学校の公共トイレを利用する際に不安と不快も感じており、極端な場合には不登校になるケースもあり、教育を受ける権利に影響を及ぼしているという。教育とその後の子供の将来の相関関係はよく強調されるが、当然トランスジェンダーの子供たちの将来もまた教育環境の影響を受けるだろう。彼らにも、精神的にも肉体的にも居心地が良く勉学に集中できる環境を享受する権利があり、国や学校はそれを整える義務があるとレポートでは主張されている。特に最近法廷で訴えを退けるケースもあったため、法的サポートの必要性が強くレポート内で訴えられている。

 更衣室やトイレの使用は他の生徒の安全やプライバシーの問題と矛盾する、という反対意見もたびたび主張されてきた。つまり、制度を悪用する人の可能性が指摘されているのである。しかし、長期間同じコミュニティにいる学生たちは「”一日だけトランスジェンダーのふりをする”ことはできないし、制度を整えた学校で学生が悪さをする回数が増えたという報告はない」、とレポート内で説明している。

 これらの調査は、自分からトランスジェンダーであることを公表し主張をしているのにその権利が守られないことを前提としているような記述が多い。日本では、そもそも自分がトランスジェンダーであることをカミングアウトしていない人も多いだろう。そのためトイレなどの設備のみを整えても、周りの目を意識して結局活用できないのではないだろうか。物理的環境の整備も必要だが、同時に周りの人々の理解と許容という社会環境の整備もあって初めて成り立つのではないかと考えさせられる。

Text by 大西くみこ