日本の終末医療、患者の希望に応えられていない? 他国と違う傾向、調査で判明

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 終末医療という言葉をご存知だろうか。終末医療とは、死を迎える人々が受ける医療のことを指す。医療の進歩により世界的に高齢化が進む中、各国は終末医療への対応がより一層問われている。この記事では、終末医療における日本の姿勢を他国と比較しながら紹介していく。

 医療政策に関する調査・提言を行っているアメリカの非営利組織、カイザー家族財団は日本、アメリカ、イタリア、ブラジルの4国における人々の終末医療に対する姿勢を比較した調査レポートを発表した。

 調査対象国の65歳以上の高齢人口の割合は、27%を占める日本から7%を占めるブラジルまで大きく異なっており、高齢化の度合いが終末医療の目的に影響を与えていると考えられる。高齢者割合が最も高い日本では82%が終末医療の目的を「痛みや苦しみの軽減」と答えたのに対し、高齢者割合が低い国ほど終末医療の目的を「延命」と答えた人の割合が高かった。調査対象の中で最も高齢者割合が低いブラジルでは終末医療の目的を「痛みや苦しみの軽減」と答えた人の割合は日本の約半数ほどに過ぎなかった。

 しかし、残念ながら現在の日本の終末医療の現場では患者の「痛みや苦しみの軽減」という最優先の希望が必ずしも叶えられているとは言えないようだ。エコノミスト誌によると、日本の医師による調査では、気管にチューブを入れられた患者の90%が回復する見込みはないと考えられているにも関わらず、日本の病院で亡くなる人の5分の1はチューブが装着されたままで死を迎える」そうだ。

 この理想と現実のギャップはカイザー家族財団の調査にも表れている。日本の医療全体に対する不満を持っている人は57%だったのに対し、終末医療に対する不満を持っている人は70%と、調査対象となった4国の中で唯一、終末医療への不満が医療全般への不満を上回った。

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 厚生労働省によると、日本では「諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行している」といい、65歳以上の高齢者の割合は2025年には日本の人口の約30%、2055年には約40%が高齢者になることが予測されている。世界で最も高齢化が進んでいる国として、これから日本では個々人が人生の終わり方を考え、家族や医療機関と相談して死に対する「準備」ができる終末医療体制の拡充が重要になっていくのではなかろうか。

Text by NewSphere 編集部