「外国人3割が差別発言経験」の法務省調査、手法に難あり? 海外掲示板で話題に

 日本で暮らす外国人の3分の1近くが、差別を経験したことがあることが分かった。また、外国人であることを理由に入居を断られた経験がある人は約40%に上った。

◆3割近くが差別された経験あり
 この調査は、日本での外国人差別の実態を把握しようと、法務省が全国37の市区で実施したもの。このような調査を日本政府が行うのは初めて。法務省は調査の目的を、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控えるなか、いわゆるヘイトスピーチが公然と行われるようになっており、「我が国における外国人に係る人権擁護施策の基礎資料とすることを目的に、在留外国人がどのような人権問題に直面しているのかを具体的に把握するため」としている。

 調査は、18歳以上の外国籍を有する人で一定期間以上、日本に適法で滞在している人を対象に、日本語を含む14ヶ国語で実施。無作為に抽出した18,500人に調査票を郵送で送付して4,252人から回答を得た。回答率は23%。国籍別では、中国が 32.5%、韓国が22.1%で、回答者総数の過半数を占めた。

「日本で過去 5 年の間に、外国人であることを理由に侮辱されるなど差別的なことを直接言われたことがあるか?」という設問に対して、「よくある」と「たまにある」を合わせると、29.8%の人が差別的な発言をされた経験があると答えた。誰に言われたか、という問いには、「見知らぬ人」が一番多く53.3%で、次いで「職場の上司や同僚・部下、取引先」の38%だった。「ない」と答えたのは66%だった。

 一方で、過去5年のうちに日本で家探しをした人の中で、「外国人であることを理由に入居を断られた」という人は39.3%に上った。また、過去5年で職探しをしたり働いたりした人の中で、「外国人であることを理由に就職を断られた」という人は25%いた。

◆レディットには600件以上の投稿
 この調査を報じたガーディアン紙の記事を受けて、大手ソーシャルニュースサイト「レディット」では、600件を超えるコメントが寄せられている。日本に10年以上住んでいるというハンドル名paburon氏は、4割近くの人が入居を断られた経験があることについて、「よくあること」とした上で、大家は賃料未払いとなるリスクがある人を拒否する傾向にあるため、日本人でも収入のある親類を保証人として署名させる必要があり、そこまでしても学生や無職、パート職の場合は入居を拒否される可能性があると説明。「(日本の住宅事情における)差別は人種以外の理由で起こる」と指摘した。

 日本に住んだ経験のあるninesquirrels氏は、求職時の差別は多くの場合、求職者側の言葉の問題だという考えを示した。正しい敬語は日本人でさえ難しく、外国人でメールや書類を完璧なビジネス・レベルで読み書きできる人は非常に珍しいだろうと述べている。

 レディットへの書き込みは日本の状況に理解を示す投稿が多いように見受けられるが、これはレディットが英語の掲示板であり英語圏出身者が多く書き込んでいることも関係しているかもしれない。「自分は白人男性だから楽だけど」というSeen_Unseen氏は、「アジアでの差別は西側諸国の比じゃない」として、「もし黒人や東南アジア出身なら(アジアでの生活は)大変」と書いている。

 一方で、FactNazi氏は今回の調査手法について疑問を呈し、「アメリカの黒人に対して『差別を感じるか?』と聞くようなもので、10人中8人がイエスと答えるに決まっている」ため、「科学的でない」とした。より科学的な手法で行われた調査として、同氏はワシントンポストが2013年に掲載した記事を紹介している。

 ワシントンポストの記事は、世界の社会科学者の集まりが実施している「世界価値観調査」から、「自分の隣人として嫌だと思うもの」という問いに対する回答リストから「他の人種」を選んだ人の割合を数値化し、ワシントンポストの記者が地図に落とし込んだもの。レディットの一連の投稿で繰り返し引用されている。

 地図は、「他の人種が隣人だと嫌だ」と答えた割合が少ない方が濃い青色で示されており、割合が大きくなるにつれて薄い青色から薄い赤へと変わり、40%以上の国が一番濃い赤で示されている。アジアでの差別が西側の比ではないという前述のSeen_Unseen氏の発言を裏付けるように、北米やイギリス、北欧では0〜4.9%で、20%以上に色分けされている国は東南アジアや中東、アフリカに多い。記事では、アジアにおいて、インドネシアやフィリピンなど人種が多様な国の方が他人種に寛容でない理由は、人種間の複雑な歴史があるためと分析している。日本は10〜14.9%となっている。

Text by 松丸 さとみ