“芸術品”でも高すぎる日本の果物の謎…海外が解き明かした答えは?

 日本を訪れる外国人観光客の興味を引いているのが、高級青果店やデパートに置かれている果物だという。見た目の美しさから宝飾品のようだと言われているが、その法外な価格には驚きの声も上がっている。ただ食べるためだけのものではない日本のフルーツの不思議を、海外メディアが取り上げている。

◆日本の果物。高いのは品質だけじゃない
 鮮やかな赤色で完璧な形のイチゴ、ピンポン玉のように丸くつやのあるブドウ、細かい網目模様が美しくT字のヘタを付けたメロンなどは、まさに芸術品だと海外メディアは形容する。ウェブ誌『Slate』のライターのビアンカ・ボスカー氏は、日本の高級果物の美しさとおいしさを絶賛するが、価格は目を見張るほど高く、デパートでは1粒5ドル(約560円)のイチゴが、普通に売られていると述べる。

 CNNは、日本では果物が高額になることは珍しくなく、高級イチゴ「美人姫」は1粒5万円、高級ブドウの「ルビーロマン」は1房100万円以上だと紹介している。2016年には「夕張メロン」が2玉で300万円という記録的高値で競り落とされ、このニュースは海外でも大きく取り上げられた。インデペンデント紙は、「メロン2つで車が買える」と驚きをもって報じている。

◆食べるだけじゃない。果物は特別な贈り物
 メディアで報じられる値段に対し、近代以前の日本史の研究者で、著書「Japan’s Cuisines」を持つエリック・ラス教授は、江戸時代には裕福な商人は、味が良く、寿命が延びるとされた季節の最初の収穫物である「はしり」を競り合って手に入れたと説明し、超高値で競り落とされるメロンやブドウはすべて「はしり」で、昔の習慣のなごりだと解説する(Slate)。

 それでも日本の果物は高過ぎると感じたSlateのボスカー氏は、高級青果店「千疋屋」を取材し、客の8割が贈答品として果物を買っていくことを知ったという。同店では1日に200個のマスクメロンが売れることもあり、果物は日本の贈り物文化において、スター的役割を果たしているとしている。

 ウィスコンシン大学マディソン校人間環境学部のソイェオン・シム学部長は、栄養価を考えるだけの西洋とは違い、日本では果物は仏壇のお供え物としてなど、スピリチュアルな意味を持つと述べる。この理由から、高級果物は重要な尊敬の意の象徴と見られるようになり、特別な機会や上司など社会的に大切な人に贈る場合に、その特別さを示すため選ばれるのだと説明している(CNN)。

 ラス教授も贈り物としての果物の重要性を指摘する。同氏によれば、13~14世紀の侍は、忠誠を示すためにミカンやメロンなどを将軍や藩主に贈り、農民たちは秋になると収穫時の手伝いを期待して、ご近所に果物や他の食物を届けたという。つまり、果物を贈ることで、奉仕や助けという形態での見返りの期待を示したというのが同氏の考えで、関係を維持するという意味で同様の習慣が、お歳暮やお中元という形で現在も残っていると説明している(Slate)。

◆過剰包装も味に貢献?
 CNNは、高額な値札は威光となり、クオリティの証だと述べ、当然それにふさわしい装飾や包装が高級果物には付き物だとしている。千疋屋の店内で見られる、宝石箱のような容器に入ったイチゴ、「スペシャル・セレクション」と書かれたたすきをまとい木箱に収められたメロンなどは、日本ならではのものだとされている。

 多くの日本人は高級フルーツの格別の味や甘さをほめたたえるが、一般的に西洋人には甘すぎるとCNNは指摘し、豪華な包装やマーケティングのうまさが、味の評価に影響しているのではないかというサンノゼ大学のマーケティングの専門家、ケン・ガート教授の意見を紹介している。

Text by 山川 真智子