福島原発事故から6年 「アンダーコントロール」からほど遠い現状、海外メディア伝える

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 東日本大震災から今年で6年になる。3月11日を前にいまだに事故の影響を受け続ける住民や、問題山積みの廃炉作業について海外メディアが報じ、2020年の東京五輪を前に「アンダーコントロール」には程遠い状況だと指摘している。

◆放射能の心配は消えない。エコシステム、食材にも影響
 ガーディアン紙は、福島第一原発の事故で強制的に避難させられた人は16万人に上るとし、6年後の今も少数の住民しか帰還していないと伝える。住民が避難した浪江町や富岡町などでは、今年になり非難指示が一部解除されることになった。ところが長らく人がいなかった町には、野生のイノシシが住みつき、自治体が駆除に大忙しだとロイターは報じる。地元のハンターは、山から下りてきたイノシシにとって、食べ物が豊富にあり、狙われることもない人の消えた里は新しい住処となり、山に戻る気が無くなったと語っている。駆除されたイノシシの一部からは、日本の安全基準の130倍の放射性物質が検出されており、帰還を目指す元住民たちには予期せぬ厄介者になっているという。

 避難せず地元に住み続けている住民の間にも、放射能への心配は残っている。いわき市のNPO「いわき放射能市民測定室 たらちね」では、食材の放射能測定をパートの母親たちが行っている。事故前には、ただ恐ろしいものということ以外、一般人には放射線の知識が全くなかったと述べる同団体の鈴木薫事務局長は、目に見えず、においもなく、触れて感じることもできない放射能と戦うには、測るしかないと述べる。測定を行う母親たちは、放射線や有機化学の知識を新たに学んでおり、地元の他の親たちからも信頼を得ているという。原子力や放射能という話題が上ることが少なくなった今でも、子供たちの健康のリスクを最低限に抑えるため、食材の安全を自分達で確認したいという親の努力は続いている(ロイター)。

◆廃炉工程表は非現実的。五輪招致での約束はどこへ?
 ガーディアン紙は、事故から6年後の福島第一原発の様子を取材している。がれきだらけの事故当時に比べ、原子炉建屋は補強され、4号機の使用済み核燃料も無事取りだされた。防護服に身を固めていた作業員たちも、今はほとんどが軽装にマスクという姿で働いているという。しかし、廃炉に向けての作業は非常に難航しているという。

 東電は、2月に2号機の格納容器内の調査のためロボット「サソリ」を投入したが、調査中動けなくなり作業を断念した。溶け落ちた核燃料の正確な位置や状態を確認するはずだったが、この失敗で調査も手詰まりとなった感がある。他の原子炉に比べ放射線レベルの低い2号機での調査でさえうまくいかなかったということは、廃炉の工程表は現実性がなく信頼できない、とグリーンピース・ドイツの原子力専門家ショーン・バーニー氏は同紙に語り、計画が現場の現実と妥当なエンジニアリングや科学に基づいていないと批判している。

 汚染水に関しても、東京電力は2020年までに建屋の汚染水をすべて除去すると発表しているが、こちらも凍土壁では完全に流入が止められないと問題視されている。2020年は、安倍首相が福島は「アンダーコントロール」だと約束して勝ち得た東京五輪の開催年だ。同紙は、第一原発を見れば「誰が見てもそうではない」と分かるという批評家の声を紹介し、敷地内のタンクにためている汚染水の量に関しても、もうじき100万トンに達すると伝えている。

◆真の原因究明も困難。廃炉の費用もますます増える?
 廃炉の前に、そもそも事故の原因究明も不十分ではないかとアジア・タイムズ紙は主張する。原子炉のメルトダウンの理由は、津波により冷却装置が機能しなくなったためとされている。しかし、日立製作所の関連会社の元エンジニア、田中三彦氏は、津波の影響を疑う余地はないが、耐震設計が不十分で地震による損傷があった可能性も否定できないとしている。

 元東芝の原子炉格納容器の設計者、後藤政志氏も田中氏と同意見で、いまだに不確実なことが多すぎると述べるが、2012年に事故調査委員会が指摘しているように、事故に関係する多くの装備が「調査検証しようにも近寄ることのできないところにある」という事実が障害の一つだと述べており(アジア・タイムズ)、今後も正確な原因究明が困難であることを示唆した。

 経産省は廃炉には30~40年を必要とし、最新の発表ではその費用を避難者への補償を含め21兆5000億円と見積もっている。この額は3年前の見積もりの2倍に達しているとガーディアンは指摘しており、事故処理は金額的にも先の見えないものとなりそうだ。

画像出典:東京電力ホールディングス

Text by 山川真智子