海外も注目、日本のジェンダーレス男子 日本の殻を破る“自由さ”が魅力?

 女性に生まれ変わりたい、というわけでは決してないが、いわゆるファッションの一環として、メイクアップを施したり女性の服を着用したりする「ジェンダーレス男子」が日本の女性たちを騒がせている。佐々木とまん氏や、りゅうちぇる氏など、エンタメ界を彩る存在になった彼らの活躍とその人気ぶりは、すでにアメリカヨーロッパでも報道されている。

◆日本男児像に変化があった?
 彼らが登場した背景にあるのは、日本人女性による男性観の変化に起因し、これがジェンダーレス男子の魅力を引き出すきっかけを作ったのではないか、とアメリカをはじめとする海外では分析されている。ともすれば唯我独尊的な、ステレオタイプの日本男子の鋳型にはまらず、自由な考えを持つ日本男子が増えていることのあかしともいえるのではないかというわけだ。

 たとえば、自由遵守の権利を重んじ、世界で初めて同性婚を合法化したオランダでも、ジェンダーレス関連サイト上にとまん氏やりゅうちぇる氏の活躍ぶりが記載された。自分の思いを自由にさらけ出す彼らの姿勢に拍手喝采を送りたい!「Go with the flow」(そのまま、時の流れに乗って行こう!)と、手放しで絶賛する声がリアクションとして、たくさん寄せられているのが印象的だ。

◆異性でもなく、同性でもない?
 ところで、70年代から80年代に活躍した「クイーン」というバンドをご存じだろうか。英国ブリティッシュ・ロックの大御所として人気を誇った彼らが、世界で注目を集めるきっかけとなったのは、日本公演での大成功だったといわれる。人気を後押ししたのは、熱心な日本人女性のファンであるが、彼女たちのほとんどが、メンバーらの「美しい外見」に魅せられファンになった人たちだった。当時の彼らは腰まで伸びた長い髪をなびかせ、時にはメイクをほどこし、極彩色のファッションを身にまとってステージに立っていたが、この姿に日本人女性たちはすっかりとりこにされたのだ。

 このことからわかるように、日本人女性はあたかも女性のように美しく身なりを整えた男性に惹かれる傾向がもともとあるのではないかと推測できる。ただ、日本の一般的な社会的視点からすれば、「男子たるもの」が女性のような恰好をすれば異端とみられ、反社会性行動とさえ見なされることも否めない。ところが、そんな通説を覆すほどユニークな存在としてアピールしているのがこの「ジェンダーレス男子」であり、アメリカをはじめとする海外でも注目された理由といえるだろう。

◆個性を自由に発揮できる存在
 自らトランスジェンダーで、早稲田大学や明治大学で教鞭をとる性社会・文化史研究者の三橋順子氏(61)が、ジェンダーレス男子について述べた言葉が、オランダのトランスジェンダー関連サイトVereniging Genderdiversiteit上に掲載されている。「現代の男性は自己表現する機会に恵まれている女性を羨ましいと感じているようだ。ファッションやメイクアップの流行を常に意識し、己の個性を磨きながら“人間”としての美しさを自由に追求できるからだ」。

 ジェンダーレス男子たちは女性と同じく、自分自身を表現するための自由と融通性を持ち合わせている。彼らの波長は女性のそれにぴったり合っているのだろう。だからこそ女性たちも共感を覚え、性を超えた部分で彼らに魅了されるのかもしれない。海外も注目するその活躍ぶりが、日本男子の通例を基本から覆す日がやってくるのはいつだろうか。

Text by カオル イナバ