沖縄女性遺棄、日米が再発防止を確認 それでも米軍関係者の犯罪がなくならない理由

 沖縄県うるま市で、元アメリカ海兵隊員で軍属の男が、日本人女性を強姦、殺害し、死体を遺棄した事件が起きた。これまでも軍関係者の犯罪は何度も起きているにもかかわらず、抜本的な解決策は講じられていない。日米がこのような態度では、今後も事件はなくならないという批判の声を、意外な国のメディアが取り上げている。

◆沖縄の怒りは収まらない
 今回の事件を受け、安倍首相をはじめ、日本の関係閣僚は米側に抗議し、再発防止の対策を要請。米側も、ローレンス・ニコルソン在沖四軍調整官らが県に謝罪し、米国防省、国務省の報道官が犠牲者に弔意を表している。

 しかし、このような対応は沖縄県民を納得させることはできていない。事件後、沖縄では米軍に対する抗議活動が行われており、参加者の1人は星条旗新聞(Stars and Stripes)に対し、「何度抗議の声を上げればいいのか」と話し、3月に米兵が準強姦容疑で逮捕された事件で、米軍幹部が知事に謝罪したにもかかわらず、また同様の問題が起きてしまったと憤りをあらわにした。「何も改善されてこなかったので、軍幹部の謝罪は空疎に感じる。軍施設はすべて閉鎖すべき」と話す人もおり、事件は沖縄県民の基地への嫌悪感をますます強くしたようだ。

◆隠れた事件は多数
 今のところ、米紙を含む多くの海外メディアは事実をメインに伝え、沖縄の県民感情やオバマ大統領来日への影響などについて考察するのみだが、ロシアのメディアが一歩踏み込み、なぜ米軍関係者の犯罪が起きてしまうのかを伝えている。

 ロシア政府系のスプートニクのインタビューを受けた人権活動家のライアン・ドーソン氏は、米軍関係者の犯罪には、公務外でも基地に逃れれば起訴されるまで日本側には引き渡されない、「抜け穴」である日米地位協定が適用されるとし、「犯人が隠れている間に重要な証拠は気づかれぬままとなり、捜査は適切に行われない。この状態がずっと続いており、沖縄は常に抗議しているのだが、アメリカからの圧力で、日本はそれを無視している」と述べる。

 今回のケースは、公務中の犯罪ではなく、日本側が容疑者を逮捕しており、米側も日本の司法制度に基づき責任を問うべきと表明したと国内メディアは報じているが、ドーソン氏は、状況が違えば(地位協定のため)、日本の法で裁くことができない可能性もあったと指摘する。さらに、今回の場合は殺人事件で、犯人も犯行を供述しているが、報じられることなく犯人が罪を逃れる強姦事件が、数多く起きていることも問題だとしている。

 同氏はまた、沖縄に駐留する米兵が残忍な理由は、彼らの多くが18、19才の若さで文化の異なる国に理解が薄いまま送られてくること、大量の飲酒が絡む事件が多いこと、そしてたくさんの武器が手に入る環境にあることだと指摘し、彼らがトラブルに巻き込まれても、不祥事をできるだけ隠そうとする米国の傘に守られてしまうとしている。

◆口先だけの再発防止ではなく、現実的な解決を
 日本の米軍関係者による強姦被害者をサポートする、キャサリン・ジェーン・フィッシャー氏は、ロシアのニュース専門局、『RT』に、日米両国とメディアが十分に問題に対応していないと述べる。オーストラリア人である同氏は、2002年に日本で米兵に強姦されたが、日本政府は犯罪が起きた事さえ、数年間認めなかったという。日本で民事訴訟に勝訴後、10年かけて犯人を追跡し、法廷に連れ出すことに成功したが、日米の関係者は非協力的だったと述べている。

 自らの経験から、「隠そうとするのは止めるべき」という同氏は、警察、医学的専門家、裁判官、政府関係者も含め、人々を啓蒙することから始める必要があると語る。「彼らは軍の強姦事件の扱い方を知らないと言い、事件が起これば米軍も日本政府も『二度と起こらないようにする』と言う。しかし、いつまでも事件はなくならない」と述べている。

 中谷防衛相は、日米間で再発防止策を協議すると述べているが、今度こそ、口だけではない現実的な解決策の提示を期待したい。

Text by 山川 真智子