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アメリカの論理で説明できない日本の貧困…背景にあるのは不平等の拡大?

  • カテゴリー:社会
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アメリカの論理で説明できない日本の貧困…背景にあるのは不平等の拡大?

 1980年代の初めまでは、他国から見た日本は平等主義で、貧困のほとんどない国と思われていたらしい。ところが、日本の貧困率は以後次第に上昇し、海外の識者を驚かせている。特に心配されるのが子供の貧困の増加だが、数字が示すのは単なる貧しさではなく「不平等」だと、海外メディアは指摘している。

◆今や日本人は貧しい国民?
 ストーニー・ブルック大学の経済学准教授、ノア・スミス氏は、日本の貧困率が上昇していることに注目する。同氏はブルームバーグ・ビューに寄稿し、ユニセフが発表した調査で、子供の貧困を測る主要な指標の少なくとも一つにおいて日本がアメリカを抜いてしまったとし、貧困レベルの上昇は、さまざまな日本の負の経済トレンドに当てはまり、多くの日本人が経済的に苦しんでいる真実を表すと述べる。

 貧困の理由は様々だが、アメリカの保守派の間では、咎められるべきは個人の行いだという考えが一般的だと同氏は言う。働かない、犯罪を犯す、未婚で子供を産む、ドラッグに手を出すなどの問題が減れば、貧困は減るという意見だ。一方リベラル派は、労組を弱め、企業福祉を止めてしまったフリーマーケット(自由市場)政策を責めているという。

◆これまでの理論で説明できない日本の貧しさ
 ところが、日本の場合は、このような説明が当てはまらないと同氏は言う。日本の失業率は低く、勤労意欲も高い。犯罪率も低く、一人親世帯もアメリカの25%に比べ全体の3%ほどと少ない。ドラッグ使用率も最近は増えたものの、アメリカに比べればずっと低く、米保守派の論理では説明がつかない。

 では、フリーマーケット政策が影響したのかと言えば、そうでもない。小泉政権以来、低賃金、非正規の雇用が増えたとはいえ、大きな政策変化はなく、特に政府の正規従業員保護への厳しい政策に代わりはないとスミス氏は指摘する。労組についても、法的に大きな変化はなく、労働争議もまれなことから、こちらも主因にはなり得ないとしている。

 結局、スミス氏は、日本人の経済的苦境の原因は、生産性の低さと、国際競争の影響ではないかと見ている。特に、日本は保護主義的であり、国内市場を保護してきたが、アジアのライバル、またアメリカの革新的な企業との国際競争には苦戦し、得意の電子機器や自動車などでも、利益は薄くなっていると説明する。結局これが労働者の懐に跳ね返っており、他国で見られるのと同様に、貧しい者はますます貧しくなり、金持ちの利息配当金による収益が増え続けていると述べている。

◆相対的貧困は不平等の指標
 スミス氏の日本が貧困に陥っているという意見に対し、ロンドンのアダム・スミス研究所のフェロー、ティム・ウォーストール氏は、スミス氏が見ている数字が表すものは相対的貧困であり、絶対的なレベルの貧困以下で暮らす日本人が増えているということではないと指摘。また、ユニセフが今回の調査で測っているのは「不平等」だと述べる(フォーブス誌)。

 これはエコノミスト誌も指摘している部分で、ユニセフも含め日本の子供の貧困率は相対的貧困率であり、手取りの世帯所得を世帯人数で調整し、中央値の50%以下を貧困と定義した上での数字だ。日本の子供の相対的貧困率は1985年には11%だったが、2012年には16%まで上昇し、OECD諸国の中でも上位に入るという。そしてユニセフは、日本における豊かな家庭と貧しい家庭の子供のギャップは、アメリカよりも顕著で、メキシコやブルガリアとそう変わらないレベルだとしている(エコノミスト誌)。

 日本の非正規雇用はすでに雇用全体の5分の2を占め、夫婦両方がそうである場合は特に経済的に厳しいこと、また、貧困にある子供の3分の1がシングルマザーに育てられていることも、エコノミスト誌は問題視している。日本の貧困家庭の子供達は、途上国のように飢餓にあるわけではないが、1日のうちまともな食事が給食しかない、電気、水道、ガスが止められたため公衆便所で体を洗う、お金がないため放課後友達と出かけたり、塾に行ったりすることができないと、その実態が説明されている。

 すでに政府はソーシャルワーカーの数を増やしたり、一人親家庭の児童扶養手当増額を決定したりしている。これについて、首都大学東京の阿部彩教授は、離婚したシングルマザー自身を責める声が多かった自民党がここまでしたのは驚きだ、と述べている(エコノミスト誌)。

 エコノミスト誌は、政府は高齢者よりも若者を助ける政策を打ち出しているというイメージを作り上げようとしているが、子供の窃盗、売春、劣悪な生活環境などが新聞の見出しを飾るなか、対応は容易ではないだろうと指摘している。

※本文中「日本の子供の貧困率がアメリカを抜いてしまった」は「子供の貧困率」ではなく「子供の貧困を測る主要な指標」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。(5/24)

(山川真智子)

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