なぜ日本人は英語が苦手? 欧州で英語ブームのなか、“必要性”が重要という意見も

 経済のグローバル化で、英語の需要は高まるばかり。欧州では、第二外国語として小学生から英語を学ばせる国が急増している。一方、英語圏の国々では、二ヶ国語習得は、認知能力を発達させ、進学、就職にも有利だと認識されつつあり、バイリンガリズム(二言語併用)が脚光を浴びている。

◆欧州は英語ブーム
 米国ピュー・リサーチセンターによれば、EU加盟国で第二外国語として英語を学習する小学生の割合は、2013年に77%となり、2000年の35%から倍増している。EUには24の公式言語があり、60以上の言語が存在するが、この多様性にもかかわらず、第二外国語に英語を選ぶ学生が圧倒的に多い。同センターは、英語が優位性を持つ、グローバル経済に対応できる子供を作ることに、各国政府が着目しているためだろうとしている。

 ノーザン・イリノイ大学(NIU)で識字能力と初等教育を研究するジェームス・コーエン助教授は、「英語は明らかにリンガフランカ(商用で使われる国際共通語)だ」とし、「世界中の事業者が、社会的地位を高め、富を得たいなら、英語が出来なければならないと信じている」と説明。現在の英語フィーバーは、何世紀も前の植民地主義が自然に発展したものだとし、負のインパクトはあったものの、植民地で英語が普及したことで人々に相互作用が生まれ、多くの学びをもたらしたと指摘している(NIU Newsroom)。

◆英語圏でもバイリンガルが有利
 一方、アメリカのような英語圏の国では、外国語学習への関心は薄い。ピュー・リサーチセンターによれば、外国語を教えるアメリカの小学校はわずか25%(2008年調べ)。NIUの研究者も、「世界中の人が英語を学ぼうとしているので、アメリカの学生は第二外国語の必要性を感じていない」と述べる(NIU Newsroom)。しかし、外国語を学ぶメリットは、じわじわと英語圏でも認識されているようだ。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 と、TOEICやTOEFLなどで有名な世界最大の非営利テスト開発機関ETSが、アメリカの移民家庭出身者を対象にした調査によれば、英語と母国語に堪能な者は、英語しかできない者より、2000ドルから5000ドル(約24万円から60万円)年収が多いという結果が出た。また、二ヶ国語に堪能な者は、大学に進学してよりよい職を得る可能性が高く、その言語能力のおかげで、幅広い社会的ネットワークを構築しているとされた(Education World)。移民の多い国では、親の言語を子供に教えるかどうかがしばしば議論されるが、教えることの利益のほうが大きいと、この調査は結論づけている。

 ニュージーランドのニュースサイト『Stuff.co.nz』によれば、1960年以前は、二ヶ国語以上の学習は、どの言語も中途半端になるとして、子供にとっては不利益につながるとされていたらしい。しかし、現在では多くの研究によって、別の言語に堪能な人、または日常的に異なる言語に触れている人は、問題解決力や精神的柔軟性など、より高い認知能力が備わっていることが証明されており、バイリンガルであることがポジティブに捉えられているという。

◆日本人の英語が上達しない理由
 さて、日本でも英語学習やバイリンガル教育の必要性が常に論じられているが、まだまだ発展途上というのが実情だ。『Stuff.co.nz』は、民族の分裂がほぼなく、人口が多く、強い経済を持つ国にはバイリンガルとなる心理的誘因がないとし、その例として日本を上げ、英語に堪能な日本人は驚くほど少ないと述べている。

 カナダのナショナル・ポスト紙に寄稿した漫画家で政治コメンテーターのJ.Jマッカロフ氏は、自身が日本で英語を教えた経験を紹介し、日本人の英語学習は途中で行き詰まる場合が多いと述べる。同氏は、ある一つの変数が語学学習を成功させると述べ、それは「必要性」だと指摘。単一の文化のもと、島国日本で暮らす自分の生徒たちには、英語の必要性は明確ではなかったと述べている。

Text by 山川 真智子