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日本人のノーベル賞受賞、米韓報道に違い 「日本人」に主眼の韓国、研究内容の米国

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日本人のノーベル賞受賞、米韓報道に違い 「日本人」に主眼の韓国、研究内容の米国

 今年のノーベル物理学賞は、東京大学宇宙線研究所所長の梶田隆章氏とカナダ・クイーンズ大学名誉教授のアーサー・マクドナルド氏が共同受賞した。また、ノーベル生理学・医学賞は北里大学特別栄誉教授の大村智氏とアイルランド出身で米ドリュー大のウィリアム・キャンベル氏及び中国人科学者の屠呦呦(ツー・ヨウヨウ)氏が受賞した。

 2人の日本人が受賞したことで、国内メディアは、受賞した研究の内容だけでなく、梶田氏や大村氏の人物像や生い立ちも事細かに報じている。海外メディアに目を転じると、韓国メディアでは「なぜ日本人に受賞できて韓国人にはできないのか?」といった、「日本人の受賞」に重きを置いた報道が目立つ。一方、米メディアでは受賞者の国籍にこだわる報道は少なく、受賞した「研究の内容」を詳しく報じた記事が目立っている。

◆「21-0の大差」と韓国紙
 韓国・朝鮮日報は、梶田・大村両氏の受賞で科学分野での日本人受賞者が21人になり、いまだ韓国人の受賞がないことについて、「スポーツの試合で言えば『21-0』の大差だ」と悔しがる。同紙によれば、韓国は国内総生産(GDP)に占める研究・開発投資の割合は世界1位だという。にもかかわらず、「なぜ韓国の科学界はこれほどの大きな差をつけられて日本に遅れを取っているのだろうか」と、同紙は問題提起する。

 朝鮮日報は、その答えの一つを日本が明治維新以後、基礎科学の発展に地道に取り組んで来たことに求める。「日本は西欧をまねるのではなく、独自の追撃戦略を練った。日本の得意分野は、物理分野の中でも『紙と鉛筆』さえあればいいと言われる理論物理や素粒子物理だ」と分析。また、超一流とは言えない大学や企業で地道に重ねた研究が陽の目を見た中村修二氏(物理学賞)、田中耕一氏(化学賞)の例を出し、「日本人特有の職人気質」とそれを全面支援する政府の姿勢も、受賞が多い要因に挙げている。

 韓国の基礎科学研究は1966年の韓国科学技術院(KIST)の設立以降に始まったという。朝鮮日報は「それも当時は自動車・機械などいち早く成果を挙げられる産業化基盤研究に力を注いだ」と、そしてようやくノーベル賞に結びつくような研究に着手したのは2000年代に入ってからだと指摘。『ノーベル生理学・医学賞受賞が容易ではない韓国…なぜ?』と題した中央日報の記事も、韓国の医学生の間では、ノーベル賞の対象になる基礎医学研究は全く人気がない点を問題にしている。韓国医学会のイ・ユンソン会長は、同紙に「基礎医学を専攻してみても就職がうまくいかず月収が臨床医師に比べてはるかに少ないのに誰がしようとするだろうか」と語っている。

◆米紙が注目する梶田・マクドナルド以前の隠れた功績
 韓国メディアがノーベル賞そのものの価値にこだわる記事を連発する一方、米メディアでは、受賞した研究の「内容」に注目する記事が目立つ。その中から、物理学賞と生理学・医学賞それぞれについて、その研究の価値を解説したワシントン・ポスト紙(WP)とSmithonian.com(米スミソニアン学術協会のニュースサイト)の記事を紹介したい。

 WPは、梶田氏・マクドナルド氏の「ニュートリノ」の研究について、一般読者にも分かりやすい筆致で解説している。ニュートリノは、あらゆる物質のもとになる最も基本的な粒子で、その正体を突き止めることが、宇宙の起源や未来を解き明かす大きな鍵になるとされている。これまで、ニュートリノには質量がないと考えられてきたが、梶田氏らは質量があることを観測によって証明し、素粒子物理学の定説を覆した。WPのキャロリン・ジョンソン記者は、アメリカの詩人、ジョン・アップダイクの、一部で有名な『ニュートリノの詩』を持ち出し、その冒頭の「ニュートリノ、それは質量を持たない」というフレーズは、「ニュートリノ、それはとても小さな質量を持つ」と訂正されなければならない、と梶田氏らの研究の意味を表現する。

 56歳の梶田氏は、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏らと共にニュートリノの研究に従事。岐阜県飛騨市神岡町の地中深くにある観測施設「スーパーカミオカンデ」で、大気中から飛来したニュートリノの観測に成功し、ニュートリノに質量(重さ)があることを突き止めた。マクドナルド氏も同様に、カナダ・オンタリオ州の「サドベリー・ニュートリノ観測所」で、同様の結論に達した。

 WPは、この2人の研究成果を踏まえ、「スーパーカミオカンデ」と「サドベリー・ニュートリノ観測所」に先立って、1960年代に、米物理学者レイ・デイビス氏がアメリカ・サウスダコタ州の金鉱の地中深くに「ザ・タンク」と鉱夫たちに親しまれた観測施設を作ったことを紹介している。これは、パークロロエチレンという薬品で満たされた巨大タンクで、今日の観測施設と違い、太陽からのニュートリノのみを検出する装置だった。そのため、ごく微量のニュートリノしか観測できず、ニュートリノの実態を解明するには至らなかった。

 それでも、「ザ・タンク」は、今日の研究成果につながる、ニュートリノ研究に欠かせない存在だったと言えよう。その金鉱があったリードという小さな町のジェリー・アパ町長は、梶田氏らの受賞に対し、WPに喜びのコメントを寄せている。「今もなお、長期的なニュートリノ研究が続いていること、そして、我が町がニュートリノ研究の“ホーム”であることを、非常に誇らしく思います」。WPは、宇宙や人間の存在を解き明かす鍵となるニュートリノ研究を、誰もが関心を抱く「大衆の仮説」と呼んでいる。

◆大村氏らの治療薬に世界が感謝
 生理学・医学賞は、寄生虫病に高い効果を持つ薬の開発に対して与えられた。Smithonian.comは、「賞の半分は、抗マラリア薬を発見した中国のツー氏に、残り半分は回虫の治療薬を開発したキャンベル氏と大村氏が分かち合った」としている。

 大村氏は日本全国の土壌サンプルを調べ、「放線菌」という細菌を静岡県伊東市のゴルフ場の土の中から発見。それを譲り受けたキャンベル氏が、その中に感染症に有効な成分が含まれていることを発見し、薬の開発を進めた。試行錯誤の結果完成した「イベルメクチン」が、ミクロフィラリアと呼ばれる多くの回虫に効力を発揮する。特に河川盲目症という失明に至る危険な感染症(アフリカや南米、南アジアなどで年間1800万人が感染し、50万人が失明に至っているとされる)や、象皮症という深刻な皮膚の炎症を引き起こす感染症を治療できる点が高く評価されている。

 Smithonian.comは、大村氏の「私は良いことをした。でも、世界中には良い研究がもっとたくさんある」というコメントを紹介。記事は、「受賞した3人の科学者のおかげで、今も何百万人もの人々が生き続けられていることを感謝したい」と結ばれている。

(内村浩介)

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