日本は福祉政策の先進国、欧米以外で最上位 高齢者が暮らしやすい国ランキング

高齢者の生活の質(QOL)の向上を目指す国際ネットワーク「ヘルプエイジ・インターナショナル」は、世界96ヶ国の高齢者の生活環境の調査を行い、高齢者が暮らしやすい国の2015年のランキングを発表した。1位はスイスだった。日本は8位に入り、欧米以外では最上位だった。

◆どんな基準に基づくランキングか
ヘルプエイジのランキング「グローバル・エイジウオッチ・インデックス」は、2013年から毎年発表されており、今年で3回目となる。96ヶ国を対象としていて、AFPによれば、世界全体では9億100万人近い60歳以上の人口のうち、91%をこの96ヶ国で占めるという。

「インデックス」で評価の対象とされるのは、以下の4分野だ。

・収入(年金制度の普及度や、高齢者の貧困率など)
・健康(60歳時点での平均余命や、健康寿命など)
・教育・雇用(就労率など)
・支援環境(周囲からのサポートの受けやすさ、公共交通機関の利用しやすさなど)

日本は、世界一の長寿命が寄与し、健康分野では全体の1位となった。総合1位のスイスは、支援環境で全体の1位だったほか、健康と教育・雇用でそれぞれ2位だった。

◆どんな国が高評価だったのか
「インデックス」で高評価を得たのはどのような国だろうか。ヘルプエイジのレポートによると、年金と、医療アクセスと、高齢者の社会参加支援への投資に関して、広範囲なアプローチを採っている国が好成績だったという。AFPは、上位国は全て、高齢者の生活向上、医療を利用しやすくする政策の実施、高齢者にとってより使いやすいインフラの整備、年金の促進に重点を置いている、と伝えた。

ヘルプエイジの構成団体である英「エイジ・インターナショナル」のクリス・ロールズ代表は、このインデックスで好成績を挙げているのは、高齢者の福祉と自立を支援する政策を取っている国だと語っている(ガーディアン紙)。ロールズ代表は、政府による高齢化問題の認識と取り組み次第で、高齢者のQOLは向上するとの旨を語っている。

1位のスイスに関して、ヘルプエイジのレポートは、人口の24%近くを60歳以上が占めるスイスは「アクティブ・エイジング」のさまざまな政策とプログラムを有しており、高齢者の就労と健康、支援環境を助成している、としている。駐日EU代表部の公式ウェブマガジン「EU MAG」によると、アクティブ・エイジングとは、QOLを低下させることなく、社会参加を続けながら年齢を重ねていくこと。

ランキングの最下位層にはアフリカ諸国が集中していた。下位10ヶ国中7ヶ国がアフリカの国だった。また、それ以外の下位国には皆、紛争という背景があるとレポートで言及されている。アフガニスタンは3年連続で最下位だった。

◆日本は高齢化問題への取り組みの先進国?
日本について、ヘルプエイジは、高齢化対策の政策面での先進国と見なしているようだ。日本は現在、3人に1人が60歳以上という超高齢社会である。その日本は、1960年代に包括的な福祉政策を採用し、国民皆保険、国民皆年金、先進的な税制などを取り入れた。おかげで現在、比較的健康な労働力人口を有しており、国民の寿命も延びた。その結果、日本は世界で最も高齢化が進んだ国であるばかりでなく、世界で最も健康で富裕な国にもなっている、とレポートは語る。8位という順位は、先進的な社会政策の表れだとしている。

また日本は、OECD加盟国中で、働いている高齢者の割合が最も高い国の1つだともレポートは言及している。

ブルームバーグは、国連の最新データだとして(「国連世界人口推計2015年改訂版」)、2050年に最も高齢化が進んでいるとされる国を列挙している。日本、韓国、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スペインの6ヶ国である。これらの国では、人口の4割以上が60歳以上となるようだ、と伝えている。そうなれば、勤労世代が、景気の停滞と増大する公的負債をこらえつつ、社会福祉費の支払いをしていくという重荷を負うことになる。「2000年世代よ、用心せよ」、とブルームバーグは呼びかけている。

これらの6ヶ国の中で日本だけが、高齢化問題に向き合っているように見える、とブルームバーグはヘルプエイジの「インデックス」を参照して述べている。ギリシャと韓国は、60代以上が住むには最悪の場所だ、と語っている。

「インデックス」では、韓国は高齢者の貧困率が48.5%と全体で最も高かった(AFP)。貧困の基準は、等価可処分所得が国の全人口の中央値の半分を下回っていることを指す(相対的貧困率)。

◆世界中で高齢化は待ったなし?
「インデックス」の目的は、国際社会に、高齢化問題への取り組み強化を訴えることにあるようだ。「エイジ・インターナショナル」はウェブサイトで、高齢化は、はっきりと世界的な問題である、とした。各国政府、特に発展途上国は、自国の高齢化に対する計画作りを始める必要がある。現在の多くの国の「若者の急増」は、将来、「高齢者の急増」となるだろう、と語っている。

ガーディアン紙によると、世界のあらゆる部分、特に発展途上国で寿命が延びているという。現在、60歳以上は世界全体でおよそ9億100万人おり、世界人口の12.3%を占める。これが、2030年には14億人に増え、世界人口の16.5%になるという。さらに、ブルームバーグによると、2050年には21億人に増え、世界人口の21.5%になるという。

ヘルプエイジのトビー・ポーター代表は、AFPで、「今日、世界のあらゆる国で、高齢人口の割合が増えている。2050年には、『インデックス』の対象96ヶ国中46ヶ国で、60歳以上の人口が3割以上となるだろう。準備のためにあと35年しかない」と語っている。

Text by 田所秀徳