全校生徒6人、神奈川の小学校に米紙が注目した理由:日本の3つの課題が浮き彫りに?

 17日、総務省統計局は、人口推計(2014年10月1日現在)を発表した。日本の総人口は減少を続け、65歳以上人口が初めて年少人口の2倍を超え、統計上も少子高齢化が鮮明になった。人口減がもたらす影響は、教育現場にも出始めている。

◆人口問題に打開策なし?
 日本の総人口は1億2708万3000人(長期滞在の外国人も含む)。前年に比べ21万5000人(0.17%)減で、4年連続の減少となった。2060年には総人口は8670万人にまで減るとされる。65歳以上人口は3300万人で、前年に比べ110万2000人の増加。人口に占める割合は26.0%で過去最高となり、初めて年少人口(0~14歳)の2倍を超えたことになる。2060年には65歳以上の人口は全体の40%近くになると予測される(総務省統計局、AFP)。

 AFPは、人口減は出生率の低さと平均余命の長さがもたらしたものだとし、労働人口が減る中、増え続ける年金受給者を支える方法を模索する政治家にとっては、高齢化は悩みの種だと述べる。また、人口ギャップを埋めるため若い移民を受け入れることにも国民の抵抗が強いと指摘し、打開策が乏しいことを示唆している。ジャパン・タイムズの取材に答えた政府の関係者も、「家庭を持たない選択をする人が増え、生き方が多様化し、移民もほとんどいない」ことから、「状況を急に変えるのは難しい」と述べている(英インディペンデント紙)。

◆少子化は子供の社会性に影響
 ワシントン・ポスト紙(WP)は、神奈川県相模原市にある青根地区を取材し、少子高齢化の教育への影響を伝えている。

 青根の住人は638人で、平均年齢は62歳。東京から80kmほどの山間にあるが、よくある交通手段の一つが「ショッピングカートとイスを兼ねた、車輪付歩行器」と記者が言うほどの、過疎の町だ。WPは、日本人は明るい未来と職を求めて、田舎を捨て東京を目指したと説明。日本の人口のほぼ3 分の1が、東京圏に集中すると述べている。

 142年の歴史を持ち、ピーク時には254人の生徒がいたという青根小学校の生徒数は、取材当時わずか6人。1クラス3人と小規模で、学年が異なり学習内容も違うため、話し合いや発表を通し子供達が様々な意見に触れる機会がないと、教師は問題を指摘する。また、やさしく行儀の良い子供達だが、他人と交わり社会で共生していくためのソーシャルスキルを学ぶ機会が少なく、大きなグループの中では声を上げるのが苦手なことも、心配の一つだと話している(WP)。

◆統合に反対も、進まぬIT活用
 今や全国にある公立小中学校のほぼ半分は、文科省のガイドラインの規模を下回っており、文科省は小さな学校に対し、他校と統合するか、近隣の学校とITを活用して合同授業を行うように指導しているという。青根の場合、住民は小学校の統合に反対。しかし、IT活用も困難だと結論づけ、近隣校とは年3回の合同授業をするのみだ(WP)。

ハイテク日本とは呼ばれるが、一般の教室でのコンピュータ装備はほとんどない。文教大学の葉養正明教授は、教育に必要なのは直接のコミュニケーションで、テクノロジーの利用は怠慢だという固定観念が、コンピュータ普及を阻む一因でもあると見ている。学習指導要領に従うなら、グループでしかできない活動もあるため、ITを通じたグループ学習が、小さな学校を救うことにもなると、同氏は主張している。(WP)。

Text by NewSphere 編集部