米国人の7割が日本を信頼、経済では中国の方を重視…日米世論調査7つのポイント

 米調査機関ピュー・リサーチ・センターは7日、日米関係に関する世論調査の結果を公表した(「アメリカ人、日本人:第2次世界大戦終結から70年後の相互重視」)。日米ともに、相手国を信頼していると回答した人が多数を占め、現在の両国の良好な関係が浮き彫りになった。質問項目は多岐にわたっており、日米間で意識の差が見られる項目もあった。

◆「日米関係の理解を助ける5つの事実」
 調査は、日米それぞれ、18歳以上の各1000人を対象として、米国内では1月、日本では1、2月に電話で実施された。AP通信によると、標本誤差は、米国調査でプラスマイナス3.6%、日本調査でプラスマイナス3.2%とのことだ。

 調査の内容は、現在の日米関係をどう思うか、互いの国民をどう思うかなど、両国の過去、現在、未来について多岐にわたっている。ピュー・リサーチ・センター(PRC)の国際経済世論調査部門ディレクターで、今回の調査の主著者であるブルース・ストークス氏自らが、「日米関係の理解を助ける5つの事実」として挙げているところを見てみよう(一部のデータはオリジナルの報告を参照した)。

1. アメリカ人と日本人はお互いに信頼している。
・日本を信頼している、と回答したアメリカ人は68%に上った(「とても」26%、「まあまあ」42%)。
・アメリカを信頼している、と回答した日本人は75%だった(「とても」10%、「まあまあ」65%)。
・信頼には男女差が見られた。米国では男性(76%)、女性(59%)、日本では男性(82%)、女性(68%)が相手国を信頼していると回答した。

2. アメリカ人も日本人も中国を信頼していない。
・中国を信頼していると回答したアメリカ人は30%(「とても」6%、「まあまあ」24%)。信頼していない、は66%(「あまり」41%、「まったく」25%)。
・中国を信頼していると回答した日本人はわずか7%で、それも全員が「まあまあ」。信頼していない、は90%(「あまり」40%、「まったく」50%)。

 現在、中国の貿易政策をアメリカ人の37%がフェアだと見なし、48%がアンフェアだと見なしているという。PRCのストークス氏は、これが、中国を信用しているアメリカ人が少ない理由の一つかもしれない、と語っている。(AP通信)

3. 中国の台頭により、アメリカ人にとって日本との関係がさらに重要なものとなる。
・アメリカ人の6割が、中国の台頭によって、日米関係がさらに重要になるとの見方を表明している。
(USAトゥデイ紙は、アメリカ人の8割以上が、今同様、あるいは今以上の緊密な日米関係を今後も望んでいる、と伝える。)

4. けれども地域の安全保障における日本の役割については、アメリカ人と日本人の意見は異なる。
・日本がアジア太平洋地域の平和と安定の維持に貢献するため、より積極的な軍事的役割を果たすべきかどうかについては、アメリカ人の中でも意見が割れている。
・日本政府がより積極的な役割を引き受けることを期待するアメリカ人は47%。役割を限定するほうを望む人は43%。
・日本人では、より積極的な役割を果たすことを望んでいるのは23%だけ。68%は軍事行動を制限することを望んでいる。

5. 安倍首相のアメリカでの知名度は低い。
・アメリカ人の73%が、安倍首相のことを知らないと回答。

◆無視できない中国経済
上記の他にも、USAトゥデイ紙が指摘するような興味深い点も見られた。

1. アメリカ人は経済的関係では中国をより重要視している。
・日本と中国、どちらの国と強固な経済的関係を持つことがより重要か、という質問では、アメリカ人の43%は中国を選び、36%は日本を選んだ。

2. アメリカ人は日本人の気質を高く評価、一方、日本人はアメリカ人を低く評価している
・アメリカ人の94%は日本人を勤勉だと見なしているが、アメリカ人を勤勉だと見なしている日本人は25%しかいない。
・アメリカ人の71%は日本人を誠実だと見なしているが、アメリカ人を誠実だと見なしている日本人は37%しかいない。
・日本人の47%はアメリカ人が自分勝手だとしているが、日本人を自分勝手と見なしているアメリカ人は19%だけだ。

◆日本の報道はどこに力点が置かれていたか
 では次に、日本の主要メディアの記事を見てみよう。見出しを眺めるだけでも、各メディアが何を重視して伝えたかがうかがえる(新聞各紙はウェブサイトのもの。また、これ以外にも記事を配信している場合がある)。

読売新聞:日本の軍事的役割「より積極的に」日米で世論差
朝日新聞:日本の軍事的役割、国内7割「制限を」米5割「拡大を」
産経ニュース:米国人の6割が日本の謝罪不要 慰安婦も6割が「聞いたことがない」
日本経済新聞:米国民の過半数、原爆投下「正当」 日米世論調査

 読売新聞は、「日本がアジア太平洋地域の平和のため、より積極的な軍事的役割を果たすべきだ」と答えたアメリカ人が47%、日本人が23%だったことを挙げ、日米の認識の差が浮き彫りになった、と報じた。同じ問題を、朝日新聞は、日本国内では約7割が役割拡大を否定的に見ていることに焦点を当てて報じた。

 一方、AP通信は、PRCの記事と同じく、アメリカ人の間で意見が割れている、と報じた。また、日米ともに、政府が賛成しているほどには、国民は賛成していない、という旨を述べている。

◆原爆投下については大きく見解が分かれた。しかしアメリカ側に変化も
 広島と長崎への原爆投下について、アメリカ人の56%が「正当だった」と回答し、34%は「正当でなかった」と回答した。日本人では79%が「正当でなかった」と回答した。日経新聞は、原爆を巡る日米の考え方の溝があらためて浮き彫りになった、と報じた。日米間の認識の差が大きい問題であり、日本メディアの大部分の記事で触れられている。

 NHKは、この質問の年齢別の回答に注目した。「正当だった」と答えたアメリカ人は、65歳以上では70%に達したのに対し、18~29歳では47%にとどまった、と伝えた。さらに、終戦直後の調査では、アメリカ人の85%が「正当だった」としていたことを伝え、この70年で、若者を中心に原爆投下への見方が大きく変化した、と分析した。

◆貿易摩擦と国民感情
 海外メディアでは、PRCの報告を踏まえ、日米がかつて深刻な貿易摩擦を経験したことを伝えているものが多い。1890年代、90年代には、米国民の大多数が、日本をアンフェアな貿易相手国と見なしていた、とAP通信は伝える。その頃には、現在と違って、(日本への)敵意が優勢だったとしている。PRCの報告によると、日本の貿易政策について、アメリカ人は以下のように見なしていたという。

1989年:フェア22%、アンフェア63%。
1993年:フェア14%、アンフェア72%。
2015年:フェア55%、アンフェア24%。

 アンフェアだと見なしている率が、大幅に下がっていることが分かる。

◆お互いの国民性をどう見ている? 固定観念にもある種の役割が
 「創意に富んでいる」かどうかの判断でも、日米間で差が見られた。これらを踏まえて、「イノベーションではアメリカが世界をリードしており、また、アメリカ人が毎年どれほど長時間働いていて、休暇を少ししか取っていないかも考えると、これはかなり衝撃的です」と、米ダートマス大の政治学のジェニファー・リンド准教授はUSAトゥデイ紙に語っている。

 OECDの最新のデータによると、2013年、日本の被雇用者は平均で年間1735時間働いたが、これはアメリカの平均の1788時間を下回っている、と同紙は伝える。

 PRCのストークス氏は、今回の調査で示されたいくつかの見解は、固定観念を反映したものかもしれないが、それでもなお重要なものだ、と同紙に語っている。「誠実だ、創意に富んでいる、強引だといった固定観念は、感情です――データに裏付けられた理性的な見解ではありません。(けれども)これらの感情には重要な作用があります。そのような固定観念は、政策に関する大局的な姿勢の決定要因として役立ちます」

Text by NewSphere 編集部