「黒塗りメイク」が海外で問題視される理由とは 無自覚差別の裏側を米メディア分析

 先日、ミスユニバースの日本代表に、日本人の母親とアフリカ系アメリカ人を父親にもつ宮本エリアナさんが選ばれたことに、賛否両論の反応が示されたことに海外メディアが注目した。日本人の気質について分析しているが、そこに示されたものは、意識的にしろ無意識的にしろ、人種差別に無関心・無頓着な態度を示す日本社会であった。だが、変化も見られつつある、との声も上がっている。

◆人種の多様性に対する配慮の欠如
 ワシントン・ポスト紙の記事の出だしは「世界のほとんどの国の基準からすれば、宮本エリアナさんは完全に日本人だ」というものだ。宮本さんは、日本生まれの日本育ち、日本語も完璧に解し、書道の達人でもある。

 しかし、日本人の反応はそういったものばかりではなかった。「日本代表にハーフを選んでいいのか」「顔がどう見ても外人」「日本人じゃない」等々の声。

 こういった反応は、日本人に多様性に対する受容性がなく均質的な社会へのプライドがあるからで、そのことが日本のエンターテインメント界で「黒塗りメイク(blackface)」が問題なく受け入れられていることにつながっているのでは、と指摘しているのが、アフリカ系アメリカ人系の週刊紙アフロアメリカン・ニューズペーパーズだ。今年の2月にも、フジテレビの音楽番組「Music Fair」でももいろクローバーZとラッツ&スターが「黒塗りメイク」で共演した画像が公開された。

 「黒塗りメイク」の何が問題かと言えば、19世紀のアメリカで白人が顔を真っ黒に塗って黒人に扮し、黒人を揶揄した芝居を行う「ミンストレル・ショー」と呼ばれるものが行われていたからだ。以後、欧米では「黒塗りメイク」といえば、黒人をバカにした行為を意味する。

 この「黒塗りメイク」に反対して、日本在住のアフリカ系アメリカ人のベイ・マクニール氏が署名活動を起こし、番組で「黒塗りメイク」が放送されることはなかった。署名活動サイトChange.orgでマクニール氏は、意図的ではなくてもバカにされたくはないし、無知で同じ誤ちを繰り返すことで日本が恥をかくのを見たくない、と述べている。

◆人種の多様性に対する教育がカギ
 一方で、日本人による無関心・無頓着による人種差別やその増長を鋭く分析し、批判しているのが米ニュースサイトVoxの記事だ。

 同記事によれば、日本の人種差別問題の1つが、ヘイト・スピーチの野放しだ。日本は、ヘイト・スピーチを規制する法律がない数少ない民主主義国家であり、2005年の国連のリポートでは日本の人種差別が「深刻」となっていることを指摘する。

 日本は民族の多様性が世界の国々の中でも低く、また、島国という地理条件と、長い鎖国の歴により「内と外」という概念が発達した、とする。「日本人」と、まさしく「それ以外の人」である「外の人」つまり「外人」とに分けてしまう、島国気質の規範と価値観を築き上げてしまったのだと述べる。

 それがために、人種を意識することなく、国民的な議論をする必要も感じていなかった、と同紙は分析する。しかし、日本は、アイヌの人たちを始め、現在では在日韓国・朝鮮人、日系ブラジル人など、さまざまなマイノリティが暮らす社会であり、さらには少子高齢化社会で多数の移民を受け入れる必要性が高まる中、人種問題に無関心でいるべきではない、と同紙はさらに指摘する。

 人種主義的なステレオタイプを増長するような「文化の盗用」、つまり他国や他人種の文化を、尊敬の念からの場合も含めて、模倣することは、なにも日本に限ったことではないが、日本の場合は自覚も議論もなく行われていることが問題なのだ、とデンプル大学ジャパンキャンパスのカイル・クリーブランド教授は、Voxに述べている。

 問題解決には、教育が良いスタート地点であり、人種の多様性や人種間の不平等・搾取についてもっと理解を深める教育を促進させるべきだとクリーブランド教授は提案する。

◆人種問題への変化の兆し
 明るい兆しも見えている。ワシントン・ポスト紙は、宮本エリアナさんのミスユニバース日本代表選出に対して、すべてネガティブな反応だったわけでない、と紹介している。

 コメントの中には、彼女が日本生まれの日本育ちであり、日本国籍を有し日本を愛しているのが重要なのだ、とした人たちもおり、彼女を「日本人らしくない」と批判した人たちを、「可愛そう」で「時代遅れ」だとコメントした人もいたということだ。

Text by NewSphere 編集部