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移民脅威論の誤解を解く:適切な政策が、治安や雇用などのリスクを減らす

  • カテゴリー:社会
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移民脅威論の誤解を解く:適切な政策が、治安や雇用などのリスクを減らす

 人口減少・少子高齢化が進む一方の日本に対し、移民受入の必要性を説く、毛受(めんじゅ)敏浩氏(日本国際交流センター執行理事)のオピニオンを掲載する。

 人口減少にもかかわらず、移民を受け入れることについては反対する意見が根強い。本稿では、そうした意見の誤解を解いていきたい。

◆移民政策で、「望ましい外国人」を受け入れよう
 まず、「移民の受け入れ政策をとらなければ、日本に移民は増えない」という誤解がある。移民増加に反対だから移民受け入れ政策に反対する、という人々は、これを前提にしている。

 しかし、現実には逆のことが起こりえる。人口減少により人口不足が慢性化する中で、正規の移民受け入れルートがなければ、非正規の移民が増えることが予想されるからだ。

 政府は2020年までに2000万人の外国人観光客の受け入れを目指し、アジア各国のビザの大幅緩和に踏み切った。この結果、富裕層ばかりではなくアジアの一般大衆にも日本への入国が認められた。今後、増加する外国人観光客に紛れて、人手不足の日本に不法滞在する外国人が増えても、決しておかしくない。つまり、移民政策とは無関係に、望ましくない移民の増加というリスクが高まっているのである。

 一方、移民政策とは、日本にとって「望ましい外国人」を受け入れよう、という制度である。受け入れをする際、受け入れ国を友好的な国に限定することや、日本語能力、学歴や職歴に枠を課して受け入れるというものである。また日本人の職を奪わないように、市場テストを行うことで、受け入れる職能分野を限定することもできる。つまり、日本の国益に沿った移民政策を構築さえすれば、「中国人移民に乗っ取られる」、「治安の悪化を招く」、「日本人の職を奪われる」といった懸念は解決するのである。

◆移民反対論を考える:海外との比較
 また、移民に関する議論はイメージで論じられることが多い。例えば、「世界中で移民の受け入れは失敗している」、「日本は移民受け入れの経験がないので失敗する」、「人口減少が加速化する中では移民を受け入れても焼け石に水」などの議論である。こうした意見の問題点もみていこう。

 まず、移民国であるアメリカ、カナダ、オーストラリアは、日本にとっても人気のある国であるが、移民を効果的に受け入れて成長してきた国である。彼らは移民政策に失敗したとはとても思えない。ではヨーロッパはどうか。ヨーロッパでは移民受け入れに苦労しているように見えるが、現在の移民の比率は各国の人口の10~20%程度である。一方、日本の在住外国人の割合はわずか1.6%に過ぎない。仮に毎年20万人の移民を受け入れたとしても、10%に達するには半世紀近い時間を要する。エベレスト登山にはフル装備が必要だが、高尾山に上るのにはハイキングの準備で十分だ。ヨーロッパが抱える問題を、今すぐ日本で起こるように考えるのはおかしいのではないか。   

 またヨーロッパの移民の問題は、キリスト教対ムスリムという、宗教的、歴史的に根深い対立の構造が根底にある。現在、日本のムスリムは在住外国人のうち5%程度に過ぎず、またムスリムと宗教的な対立の歴史のない日本で、ヨーロッパが抱えるような深刻な問題が起こるとは考えにくい。

 最近、ヨーロッパで広がりつつある動きに、文化間対話政策(インターカルチュラリズム)がある。日本では専門家の間にしか知られていないが、これは移民とホスト社会との交流をより積極的に行い、異文化をテコに地域の活性化を図ろうという欧州評議会の事業である。現在26都市が参加しており、欧州全域に急速に広がりつつある。この政策は移民受け入れの最終モデルと考えられており、長い移民受け入れの成功、失敗の経験をもとに生まれた最新の政策である。日本はこうした最新の知見を学ぶことでヨーロッパが経験した失敗を回避することができるのだ。

◆多文化共生という草の根の土台
 日本は外国人の受け入れの経験がない、というのも大きな誤解である。日本では、草の根の国際交流では半世紀以上にわたる歴史があり、外国人との共生を図る多文化共生政策も四半世紀の経験を持っている。

 例えば、大半の都道府県と政令指定都市では多文化共生の計画の策定をすでに終えており、自治体が設置した数百に上る国際交流協会によって、多文化共生の活動は各地で活発に行われている。市民やNPOの多文化共生活動も盛んで、外国人が7千人しかいない山形県でも、ボランティアの市民らによって設立された日本語教室が29 ヶ所も存在する。国の移民政策がない中で、地域社会では、既に外国人受け入れの土台が一定レベルできているのである。

◆多文化パワーの効果に期待
 日本の人口減少と少子高齢化のスピードを考えると、多少の移民を受け入れても焼け石に水だという意見もある。確かに、今後加速する日本の人口減少分のすべてを、移民の受け入れで補充することは無理だろう。しかし、能力とやる気があり、日本社会で活躍したいと考える若い世代の移民を受け入れ、地域社会で定着してもらうことができれば、一定以上の効果が期待できる。

 それは筆者が「多文化パワー」と呼ぶ効果によるものだ。多文化パワーとは、異文化を持つ人々と日本人の間に生まれるウインウインの相乗効果を指す。ハングリー精神の旺盛な移民の人たちが各地で活躍を始めると、日本の若者も大いに刺激を受けるだろう。異文化がぶつかることで新たな発想やつながりが生まれ、そこから新たな産業が生まれる。シリコンバレーの発展はまさにその典型例だ。日本の若者も世界とのつながりを実感しながら、より自信を持って日本の未来を考えることができるようになる。そうした移民受け入れのプラス面を引き出し、マイナス面を最小限に抑える知恵のある移民政策の導入が必要なのである。

◆まずは小規模事業から、早急な実施が必要
 移民の受け入れは最初から大規模で行う必要はない。最初は小規模で行い、そこで得られた経験をもとに、徐々に数を増やしていくべきである。その意味では、現在の日本で行われている移民受け入れの議論はオールオアナッシングの極端な議論である。移民を毎年、数十万人受け入れることは、一定期間の試行的な事業を行い、その経験を十分に咀嚼した後でも遅くない。しかし、最初の一歩は早急に行う必要がある。

 もし今後も人口減少が続くと、日本はアジアの中でどうなるのか。中国は2008年に日本のGDPに追い付き、現在すでに2倍にまで差は開いた。2050年には日本のODAは中国の10分の1にまで減少すると予想され、このままではアジアの一小国となり、中国に飲み込まれてしまいかねない。人口減少が招く日本の危機的な将来を直視すれば、より客観的な立場から、日本に役立つ移民の受け入れをどう行うべきか、という視点から議論しなければならない。

・著者:
毛受(めんじゅ) 敏浩 (公財)日本国際交流センター 執行理事
・主な著書:
人口激減―移民は日本に必要である (新潮新書)

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(Newsphere編集部)

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