海外“マタハラという造語が生まれるほど…” 日本の職場の性差別に懸念

 妊娠後に配置転換を希望したことで降格させられたのは「マタニティー・ハラスメント」だとし、広島の医学療法士の女性が元勤務先に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は「降格は違法」との判断を示し、審理を高裁に差し戻した。

◆降格は選択ではない
 原告の女性は、妊娠を機に、負担の少ない仕事への転換を勤務先に希望。条件の一部として低位の業務に就くことを受け入れ、女性は別の部署に異動したが、産休明け後もその業務に留め置かれた。この処遇を不当とし、女性は約170万円の賠償を求めて、元勤務先を提訴した。

 1、2審は、「降格は女性が自ら選んだもので、妊娠とは関係がない」と請求を棄却したが、最高裁は「男女雇用機会均等法のもと、妊娠や出産のため、また産休や労働の軽減を求めたために、女性を解雇したり不利益を与えることは、違法かつ無効」と述べ、審理を広島高裁に差し戻した。これにより、高裁判決が逆転する可能性が高まり、原告の弁護士は、「判決がくつがえされることを信じる」とコメントした。

◆職場は女性に不平等
 ロイターは、9月に日本を訪問したIMFのラガルド専務理事が、女性にもっと力を与えなければ、急速に進む高齢化で、日本経済の活力と生活水準が後退すると述べたことを伝えている。しかし、日本では妊娠した女性や若い母親を職場から追い出そうとすることはよくあり、最近では「マタハラ」という造語も生まれたほどだと説明。法で保障されていながらも、日本女性は職場で平等な地位を得ていないと述べる。

 いやがらせを受けている妊婦や若い母親のために、「マタハラNet」を設立した小酒部さやか氏も、働く女性の現実はお寒いものだとロイターに話す。

 小酒部氏自身も、実はマタハラの被害者だ。妊娠中に上司から辞職を求められ、体調不良にも関わらず、無理をして仕事を続けて流産。回復後職場に戻ると、「生理は戻ったのか」、「子作りは再開したのか」と言葉のいやがらせを受け、退職を余儀なくされた。同氏は最終的にこの事案を労働審判に持ち込み、6月に和解を勝ち得ている(ロイター)。

 指導的役割に就く女性を2020年までに全体の30%にと言う安倍政権に対し、「少数のトップ管理職のエリート女性にフォーカスするより、底辺にいる私たちのような女性が持つ問題を解決してほしい」と述べる小酒部氏は、「マタハラNet」を通じ、働く女性の支援を盛り込む法律制定を、国に働きかけている(ロイター)。

◆政府にも注意喚起
 厚生労働省によれば、2010年に第1子出産後に職に留まった女性は46%。賃金が上がらず、共働きが増えたことも影響し、2001年の32%から増加している。また、昨年3月までの1年間に、政府が女性労働者から受けた妊娠、出産関連のいやがらせや差別に対する苦情は2085件と、6年前に比べ18%も増加した(ロイター)。

 菅官房長官は、今回の最高裁判決を受け、関係省庁と協力して、妊娠、出産のため女性が不利益を被らないよう支援したいと発言。政府にも働く女性への支援を強調させる結果となった(ロイター)。

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Text by NewSphere 編集部