“御嶽山噴火、予測できたのでは” 海外の火山専門家、見解割れる

 9月27日、長野県と岐阜県の県境に位置する3000メートル級の火山、御嶽山が噴火した。死者は12人に上り、心肺停止の状態で24人が発見されるなど、いまだ救出作業が難航している。

 9月初め気象庁は御嶽山の火山性微動に変化が見られると警告していたが、警戒レベルは引き上げなかった。火山性微動は27日の噴火直前に始まり、28日以降振幅が小さくなってから29日午後から再び大きくなるなど、5~6時間おきに変動していた。気象庁は28日に、噴火以前にマグマ上昇の前兆となる、地表の変化や頂上からのガスなどは見られなかったと発表している。海外メディアはそれぞれの見解を報じた。

【予測できたのでは?】
 英ガーディアン紙では、ベンフィールドUCL災害研究センター長のビル・マクガイア氏は、微かな前兆を正確に分析し警告を出すことができていれば、多くの命を救うことができただろう、と述べる。同氏によると、マグマが岩を崩しながら地表に到達する際には小さな地震が頻発するようになり、地震計で探知することができる。マグマが火山内部から圧力をかけるため地表が膨らみ、これもGPSなどの探知機で探知することができるという。

 御嶽山の噴火は前兆がなかったと報道されているが、実際には9月中旬から小さな地震が増えておりマグマが移動していることが予測できたのでは、とマクガイア氏は指摘している。フィリピンのピナツボ火山や、モントセラト島のスーフリエール・ヒルズ火山など火山性地震の増加により、数日以内の噴火を予測できていることから鑑みても、惨事の前にできることがあったのでは、という見解だ。

【予測困難な水蒸気爆発】
 一方で科学情報サイト『LiveScience』、タイペイ・タイムズ(台北時報)は、今回の噴火は予測の困難な水蒸気爆発である可能性が高いと見ている。専門家が『Live Science』に説明したところによると、水蒸気爆発は予測が不可能と言っても過言ではない。「探知機では、より地下深くの活動まで探知することは難しく、水蒸気爆発の監視には情報も科学力も不足している」と、ニューヨーク、ラモント=ドハティ・アース・オブザバトリーの火山学者Philipp Ruprecht氏は指摘する(LiveScience)。

 水蒸気爆発とは、付近の地下水がマグマの熱で気化し、大量の水蒸気が発生して圧力が急速に上昇することによって、火口や山体が破壊されることによって起こる噴火だ。火山爆発の前兆とされる、山の膨らみや山頂からの水蒸気は見られないことが多く、予測は困難とされている。

 アメリカ地質調査所カリフォルニア火山観測所の科学者マーガレット・マンガン氏は、過去に起きた水蒸気爆発から、地震増加の際に監視を強化する必要があると言う(LiveScience)。また台湾中央気象局(CWB)の地震学者、郭鎧紋氏は、火山爆発では安山岩が多く見られるのに対し、水蒸気爆発では花崗岩が多く見られることがわかっていることを、指摘した(タイペイ・タイムズ)。

【水蒸気爆発の被害】
 水蒸気爆発では溶岩ではなく、火砕流が噴出される。最高温度700度、速度は時速161キロにも達する可能性があり、「速度が速いため逃げられる類の災害ではない」と、マンガン氏は話す。

 今回の噴火では200人近くが下山、または山小屋に避難して生き延びた。不気味な暗闇、空から降り注ぐ岩、息苦しいほどの深い灰などのことを話しているという。水蒸気爆発による灰は粒子が非常に細かいと、ニューヨーク、ラモント=ドハティ・アース・オブザバトリーの火山学者Philipp Ruprecht氏は話す。「サウナの中で粉塵の嵐に見舞われるようなもの。息もできなかっただろう」と予測する。二酸化硫黄や、高速で飛んでくる岩が致命傷になるという。

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Text by NewSphere 編集部