御嶽山噴火、原発再稼働への影響は? 政府は否定も、海外メディア注目

 27日の御嶽山の噴火では、これまでに12人の死亡が確認されたほか、山で発見された24人が心肺停止状態とされている(30日8時現在)。また、負傷者の数は少なくとも69人となった。捜索・救助活動は今なお続いている。

 今回の噴火は、現在の知見では、予測が困難なものだったと専門家らは語っている。今回の噴火によって、今後、原発再稼働に対して、不安の声が高まる可能性があることを、海外メディアが伝えている。

【今回の噴火は、原発再稼働の政府の方針に影響せず? 官房長官語る】
 菅義偉官房長官は、29日午前の記者会見で、今回の噴火が、九州電力川内(せんだい)原発の再稼働に与える影響を問われ、「ないと思う」と答えた。また、今回の噴火によって、再稼働をより慎重に判断する必要はないかとの質問に対しては、菅長官は「そうは思わない」と答えた。これらの発言については、ロイター(米版)が報じている。

 鹿児島県にある川内原発については、原子力規制委員会が9月10日に、原子力施設の安全に関する新規制基準に適合しているとする「審査書」を正式決定している。この判断についてもロイター(米)は触れている。

 ロイター(英版)は、川内原発が、日本に110ある活火山のうちの1つ、桜島から50kmの位置にあることを伝える。また、ロイター(米)は、川内原発の周囲には、過去の噴火によって形成された巨大カルデラが5つあることを伝える。そのうち最も近いものは、同原発より40kmの位置だという。

【今回、噴火の予測ができなかったことは、川内原発の再稼働には影響しない?】
 ロイター(米)によると、原子力規制委は、川内原発の運用期間内に、「大規模な」火山活動の起こる見込みは、十分に小さい、と語っているという。だが、火山活動の活発なこのエリアで、それに対する安全性の考慮が十分になされているのか、疑問視する声もあるようだ。

 ロシアの多言語ニュース放送局RT(旧名ロシア・トゥデイ)の英語サイトは、原発再稼働に関する日本政府の方針と、今回の菅長官の発言を報じる記事で、川内原発再稼働反対派の見解についても紹介した。反対派は28日、鹿児島県で抗議集会を行ったが、その組織者の1人である向原祥隆氏は、「地震や津波などといった自然災害がいつ襲って来るかは、誰にもわかりません。御嶽山の噴火を予測できなかったという事実は、そのことを強調しています」と語ったという。

 首相官邸ウェブサイトによると、菅長官は「今回は水蒸気(爆発)ということで、予測は極めて難しいと従前から言われている」と、29日午前の記者会見で語っている。水蒸気爆発の予測ができないということは、原発再稼働の判断に際しては、すでに織り込み済みだということをにおわせている。

【厳重に監視していたのに、それでも予測はできなかった?】
 朝鮮日報は、予知の失敗という側面にスポットを当てて報じている。

 御嶽山は1979年に(今回と同規模の)水蒸気爆発を起こしたほか、91年と2007年にも小規模の噴火を起こした活火山である、と記事は伝える。御嶽山には地震計12台、カメラ2台、傾斜計1台のほか、地殻変動観測装置が5ヶ所に設置され、気象庁が24時間体制で監視している。それにもかかわらず、今回は予知できなかった。気象庁は、マグマが直接噴出するマグマ爆発ではなく、マグマが地下水を熱することで起こる水蒸気爆発だったため、予知に失敗した、と説明しているとのことだ。

 同紙は、「今回の予知の失敗は、火山に対する日本人の潜在的な恐怖をかき立てている」と報じている。

 各メディアは、原発再稼働の是非について判断は示していない。今回の災害が、日本の原発再稼働にどう影響するか、この点に注目しているようだ。

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Text by NewSphere 編集部