残業文化変えないとアベノミクス失敗? 女性の雇用、健康問題… 海外メディア指摘

 日本の労働力人口は、高齢化や人口減のため、中長期的に減少が予想されている。内閣府の予測によると、女性や高齢者の労働参加が全く進まない最も悲観シナリオの場合、労働力人口は2060年に3795万人と現在の6577万人から42%減少する。

日本の雇用慣行である長時間労働が、女性の職場進出を阻み、働き盛りの世代の心身を蝕んでいると、海外からの批判を集めている。

【残業とマタハラ】
 安倍晋三内閣は、2020年までに女性管理職を30%に引き上げると公約している。しかし、長時間労働が女性管理職の増加を阻んでいる。

 日本女性の60%以上が第一子出産後に仕事を辞める、とカナダのメディア『Leader Post』は報道している。マタニティ・ハラスメントが辞職の一因、とメルボルン大学の大石奈々教授は指摘する。日本労働組合総連合会によると、約30%の女性がマタハラを経験している。

 50%以上の子供を持つ女性が、残業を免除されるなら正規社員として職場復帰したいと希望している。しかし、実際に復帰できた女性は10%以下にすぎない、と同メディアは報道している。

【職場のストレス抱える日本の若者、幸せ度低い】
 長時間労働は働き盛りの世代の心身も蝕む。今年2月に全国の20~80代の男女5000人から回答を得た厚生労働省の調査によると、日本の若者の幸せ度は年配者よりも低かった。自分がどの程度幸せかを10点満点で尋ねたところ、平均は6.38点だった。世代別では、65歳以上は6.92点だったが、40~64歳は6.25点、20~39歳は6.03点と若い世代ほど低かった。

 不安や悩みの内容についての質問(複数回答)では、20~40歳の現役世代の男性は「仕事上のこと」に悩む割合が約半数に上った。仕事の悩みを抱える人の「幸福度」は平均5.79点と、仕事の悩みを抱えていない人の6.59点に比べて0.8点低かった。

 日本の若者は働きすぎで疲れ果てている、と同調査を取り上げたウォールストリートジャーナルは指摘している。

【職場いじめと長時間労働から労働者を守れ】
 厚生労働省が発表した2013年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」によれば、仕事による強いストレスなどが原因で発病したとする精神障害への労災補償の請求件数は、1409件。前年度に比べて12%増え、統計資料が残る1983年以降で最も多かった。

 労働力人口減少の危機に直面している日本は、貴重な人材を失うことを何としても避けなければならない。種々のハラスメント、いじめ、長時間労働から労働者を守る法律が制定され施行されるなら、日本の労働力不足を解消できる、と海外メディア『Lexology』は指摘している。

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Text by NewSphere 編集部