福島原発事故によるがん増加は「予想されない」 国連科学委の調査報告に海外も注目

 国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)は2日、福島第一原発事故による放射線の影響に関する報告書を発表した。報告書は、福島とチェルノブイリの違いを指摘し、被ばくによるがんの増加は予想されないと結論づけた。

【事故後の対応ががんの危険を減らした】
 海外各紙は、UNSCEARの科学者たちの、「日本での被ばく量はチェルノブイリよりかなり低く、そのためがんの発生率への影響が低い」という指摘を取り上げた。福島の事故が、がんや遺伝病、先天性異常の発生率に大きな変化をもたらすことはないだろうと報じている。

 ロイターによると、報告書は、チェルノブイリ原発の爆発では、ヨーロッパの広域に放射性ダストが運ばれ、原発周辺の住民は放射性ヨウ素で汚染された牛乳によって被ばくしたと指摘。一方福島の場合は、過去最悪レベルの事故ではあったが、避難指示を含む政府の迅速な対応で、住民が放射性物質にさらされる危険を大きく減らし、評価されたという。

【子供には甲状腺がんのリスクも】
 しかしUNSCEARは、「理論上、最も被ばく線量が多かった子供達のグループでは、甲状腺がんの危険がある」という指摘もしている。福島の事故当時、約3万5000人の5歳以下の子供達が、甲状腺の吸収線量が平均45~55ミリグレイの地域に住んでいたとされる。しかし、吸収線量には個人差があり、少数ではあるが100~150ミリグレイに上るケースも予測されるという。

 UNSCEARでは、「このグループの甲状腺がんのリスクは増えると予想される」としながらも、甲状腺がんは幼い子供達にはまれな病気で、通常でもリスクは非常に低いため、チェルノブイリのような大規模な発生は考えられないとしている。

 また、その他の懸念される事項として、『メディカル・デイリー』によれば、UNSCEARは原発作業員にも言及。「160人以上の作業員達が現在推定で100ミリシーベルト以上の被ばくをしており、このグループでは将来がんのリスクの増加が予測される」とし、定期的な検査が必要だと注意を喚起している。

【精神面での懸念を指摘する報道も】
 ロシア・トゥデイは、今回の報告書で取り上げられなかった、原発事故が子供達にもたらした変化について触れている。

 福島第一原発から55kmの場所に位置する幼稚園の職員は、「極端に怖がりの子供がいる」と話す。彼らは食べ物を見ると「放射能が入ってるの?」と尋ねるため、その度に「大丈夫、食べてもいいよ」と答えてやらねばならないという。

 同サイトは、原発事故のころに生まれた子供達は、感情的、短気など、精神発達面での問題を抱えていると報じる。ただし、報告書と異なり詳細な調査を行った結果ではないため、一部の例を誇張している懸念もある。

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Text by NewSphere 編集部