国の“婚活支援”、出生率低下の歯止めとなるか? 雇用対策のほうが重要との批判も

 2013年に誕生した日本の新生児は103万人で統計上過去最低。国立社会保障・人口問題研究所によれば、現在1億2,700万人の人口は、2060年には3分の1になってしまうという。出生率を上げるには結婚からと、各地の婚活イベントに政府として財政支援しようという動きが出ている。

【出生率低下で、社会保障制度が崩壊?】
 ブルームバーグは、日本の出生率は1974年には2.00以上であったが、2012年には1.41まで低下したと紹介。この傾向が続けば、2050年までに高齢者1人を支える勤労者の数は、現在の2.6人から1.3人となり、歳入が減るなかで、社会福祉費も増大し、国の債務負担はさらに大きくなるという。

 また、2012年度の日本の社会保障費はGDPの22.8%だったが、2025年度には24.4%になると予測される。中央大学で社会学を教える山田昌弘教授は、「日本経済に出生率低下は深刻な打撃を与える」と述べ、このままでは日本の社会保障システムは崩壊すると警告する。

【結婚は出生率上昇のカギ】
 海外でも出生率の低下に悩む国は少なくないが、フランスでは母親への補助金や産休といった福祉政策を通じて改善され、現在1.99にまで回復している。もっとも、他国では結婚していない女性にも支援があり、日本では2%しかいない婚外子も、フランスでは56%、アメリカでも41%となっている。

 自民党の議員らが作る「婚活・街コン推進議員連盟」の会長である小池百合子氏は、日本の社会倫理の下ではシングルマザーになるのは困難であり、出生率を上げるには結婚を援助するのが効果的と主張する。また、女性1人が生涯に産む子供の数を2人以上に増やすという目標を設定する同議員連盟が中心となり、国が婚活パーティに財政援助をしようという動きも出てきた。

 しかし、出会いのための婚活パーティや街コンに国費を使うことに関しては、疑問の声もある。自民党の小林史明議員は、自身のブログで、婚活イベントや街コンは、民間で十分に回るとし、予算は安心して子育てできる環境整備に使うべきで、結婚への障害となる所得や雇用の問題を解決するほうが大事だと主張している。

【結婚より個人の幸せ】
 一方、ジャパンタイムズは、結婚を選ばず、個人としての幸せを追及する人が増加していることを指摘する。50歳以上で一度も結婚していない「生涯独身」の割合は、2010年は男性20.14%、女性10.61%で、2030年にはそれぞれ30%、23%になると予想されている。

 今や「おひとり様」が珍しくない時代。結婚という、神聖な義務であり当然とされた昔ながらのしきたりは、もはや優先されるものではなくなったと同紙は述べている。

「婚活」症候群 (ディスカヴァー携書) [amazon]

Text by NewSphere 編集部