世界のイルカ漁批判が止まらない要因とは? 映画、セレブ、ソーシャルメディアの影響か

 日本のイルカ漁に反対する世界の声が相次いでいる。キャロライン・ケネディ駐日米大使は1月18日、ツイッター上で「イルカを追い立て殺害する漁は残酷で憂慮に耐えません。アメリカ政府は、追い込み漁に反対します」と漁を非難し注目を集めた。

 またこれまでに、ドイツやイギリスの政府関係者、アーティストのオノ・ヨーコ氏なども反対の立場を明らかにしている。ショーン・ペンら米セレブが、オバマ大統領に嘆願したという報道もあった。

 海外メディアも、こうしたイルカ漁反対の意見を取り上げている。

【反対派「太地町の漁は“伝統”ではない」と】
 イルカ漁に反対する環境保護団体シー・シェパードは、2月14日のバレンタインデーに合わせて、日本による鯨とイルカへの残虐行為対し、アメリカ各地の日本大使館前で抗議を行う予定だという。

 米動物保護団体のケイシー・カンガス氏は、ハフィントン・ポスト(米国版)への寄稿で、ケネディ氏の発言を賞賛している。同氏は、このような反対発言に日本政府は激しい反応をみせているが、より多くの外交官がケネディ氏を見習い、イルカ漁禁止に向け日本へ圧力をかけるよう求めている。

 ワン・グリーン・プラネットは、イルカ漁は伝統だとの日本側の主張について不当だとしている。同メディアは、多くの日本人がイルカ漁への国外からの非難は、彼らの文化に対する攻撃だと感じているとし、「他国の食文化を批判する権利は誰にもない」との意見を紹介した。しかし、現在のイルカ漁は、伝統的な漁とは比べものにならない高度な機械を使って行われ、和歌山県太地町でのイルカ漁もごく最近の1969年に定着したものだ、と同メディアは“伝統”とは言えないとしている。

 このような動きに対し、太地町はケネディ氏にその目で漁が正当なものであるという現実を確認して欲しいと、同町の漁の視察に訪れるよう要請している。

【イルカ漁の現実】
 鯨やイルカを殺すことは、牛や羊、鶏などを殺すことと比べ倫理的な正当性において違いはないかもしれない。しかし、健康の観点からすると、それらの肉が、有毒な鉛や水銀に汚染されていることはよく知られている、とワン・グリーン・プラネットは指摘している。
 
 また、「太地町のイルカ漁の現実的な動機は、その肉を食べるためではなく、世界中の海中公園や水族館に捕まえたイルカを売って多額の現金を手にするためだ」との意見を取り上げた。

【未だ消えない、映画「ザ・コーブ」の投じた波紋】
 1969年から続くイルカ漁は、ここ数年海外からこれまでとは違った反響を呼んでいる。最も大きな契機は、2009年の映画「ザ・コーブ」のアカデミー賞受賞(2010年)だっただろう。この映画により、イルカ漁に対するメディアの関心が急速に高まった、と米メディア、エコロジーは報じている。監督のルイ・シホヨス氏は、「良いドキュメンタリーを作れば、その作品は世界に影響を与え続ける事ができる。映画はもう5年も前の作品だが、問いかける力をいまだ失っていない」と話しているという。

 しかし今年は議論がさらに加熱している。これは、最近になって多くの有名人たちが発言をしたためだけではなく、ソーシャルメディアでの議論が高まったことで世界中の関心事となっているためだ、と同メディアは分析している。

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Text by NewSphere 編集部