NHKは御用メディアか? 海外紙、新会長の発言に騒然

 NHK新会長となった籾井勝人氏は25日、就任会見で、日本は第二次世界大戦中の従軍慰安婦の利用についての非難を気にする必要はないと発言した。この発言に対し、国内外で非難が高まっている。

 同氏は、あくまで個人的な見解だと説明したが、記者たちが会見はNHK会長としてのものであることを指摘すると、発言を撤回するとした。

【海外メディアを驚かせたNHK会長の発言】
 籾井氏は、「従軍慰安婦を置いたことは、現代の道徳からすると悪いことだ」「しかし、その存在は、あの時代の現実だ」「日本は従軍慰安婦を強制した唯一の国だという韓国の主張には困惑させられる。金をよこせ、償いをしろ、と彼らは言うが、この問題は日韓条約(1965年締結)で解決済みだ。なんで今更それを蒸し返そうとするのか?妙な話だ」と話した、とロイターが朝日新聞の記事をベースに報じた。

 同氏はまた、中国との領土問題などでの国際報道に関して、NHKは当然ながら日本政府の立場を示す唯一の報道機関だ、とも述べた。「国際報道は、国内向けとは異なる」「政府が左だと言えば、我々が右だと言うことはできない」と政府の意向に沿うべきとの見解を示した。

 英BBCは、NHKが公共の機関として政治的に中立であるべきだとし、公共放送のトップが着任して初めての会見で非常に政治的な見解を示したことに驚いている。同メディアは、籾井氏について、放送業界での経験が無い民間企業のビジネスマンだ、と評している。

【政府による影響力行使は避けられないのか】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「新しいNHK会長は政府寄りか?」との見出しをつけた。同紙は、籾井氏の、領土問題に関する報道は政府の意向に沿うべきだとの発言から、日本の報道への政府の影響力が強まるのではという懸念が強まっている、と報じている。

 同氏は、番組編集に関して政府から完全に独立することはないだろう、と話したという。また、国内では政治的中立を保つが、国際放送では、日本国の利益を促進するため総務省が放送内容について要求をすれば、それに従うとした。

 NHKは基本的に、国民から受信料を集め運営している(収入の96%、HPより)が、政府からも援助を受けている。2014年度の政府からの支出は35億円になる予定だ。NHKの広報担当者は26日、国際放送の約16%は政府からの援助で制作されていると説明したという。

 このような援助は、NHKが政府の立場を支持する結果になっている、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘している。例えば、北朝鮮による拉致問題への関心を維持するために国際ラジオ放送で呼びかけをするよう求められ、応じていると報じている。

 NHK会長は、首相に指名され、国会で承認を受けて就任する。しかし、政府内では既に、新会長の発言は国営放送のトップとして許されない、辞職するべきだとの声がある、とロイターは報じている。

 なお籾井勝人氏は70歳。三井物産の副社長や、ITサービス大手の日本ユニシス社長などを歴任し、1月25日、任期3年のNHK会長に就任した。同氏は、会長に指名されたのは安倍首相に気に入られてだとの見方を否定しているという。

※本文中「国営放送」は「公共放送」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。(1/28)

NHK――問われる公共放送 (岩波新書)

Text by NewSphere 編集部