“殺し屋を止めて” 太地町の伝統イルカ漁に海外からの批判噴出

 ここ数日、和歌山県太地町でのイルカ漁に、海外からの批判が殺到している。太平洋岸にある人口わずか3,200人の町は、2009年の映画「ザ・コーブ」で漁の手法を批判的に取りあげられ、世界的に有名になった。

 今年も9月の漁解禁から、シーシェパード等の環境保護団体の監視対象となり、捕獲されたイルカについての情報がネット上で拡散されている。

 18日には、赴任して間もないケネディ駐日米大使までが、ツイッターでイルカ漁に対して懸念を表明。小さな町のイルカ漁に、世界の目が向けられている。

【非難を浴びるイルカ囲い込み漁とは?】
 英ガーディアン紙は、250頭以上のクジラが17日に太地町で捕えられた、というシーシェパードの活動家の話を紹介している。漁は週末にかけて続き、イルカの家族は離れ離れにされ、食肉用とマリンパークや水族館への売却用に仕分けされるという。

 米CNNもシーシェパードの発言を引用し、「日本の太地湾で、ストレスを受け血だらけのイルカたちが、殺されるのを待つ」というショッキングな見出しをつけて、太地町のイルカ追い込み漁を紹介している。

 シーシェパードによれば、まず地元の漁師たちは、40~60人で推定250頭以上とされる大きなイルカの群れを入江に追い込み、小舟でイルカたちを浅瀬に用意された防水シートの方へ押し込む。そして、シートの下に隠れて、漁師によい収入をもたらす「一番きれいな」イルカたちを選ぶのだという。

 しかし、その過程は「残酷でストレスに満ちている」うえ、人に扱われたことによるけがやストレスで死んでしまうイルカも多いそうだ。売却用のイルカが選ばれた後は、残ったイルカの屠殺が行われ、入江の水は血で赤く染まるのだという。

【地元は伝統的な慣習を擁護。映画「ザ・コーブ」を批判】
 一方、地元の担当者は、何世紀も続く慣習への海外からの批判に怒りを感じている、とCNNは報じている。太地町のある和歌山県は、ホームページ上で映画「ザ・コーブ」を批判し、映画が事実を捻じ曲げ、漁業者への偏見に満ち、不公平だと述べている。

 また、太地町での漁業は伝統的方法で行われ、合法的かつ行政の指導のもと、規則に則ったものだという見解や、「イルカ漁が海外の動物保護団体によって繰り返される、心理的嫌がらせと干渉のターゲットとなってきた」というコメントを紹介している。

【ケネディ大使ほか、有名セレブからも批判噴出】
 CNNによれば、シーシェパードは太地湾で起こる出来事の映像をライブストリーミングで公開しており、ツイッターでもたびたび情報をアップデートしている。

 これらの情報が届いたのか、18日にケネディ駐日米大使はツイッター上で、「米国政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています。」とつぶやいた。

 USAトゥデイ紙によると、女優のカースティ・アレイ(120万以上のフォロワー)も19日、ツイッターで以下のようにつぶやいた。“なぜ日本のような魅力的で、賢くって、ゴージャスな国が、THE COVE(ザ・コーブ=太地湾のこと)の血に染まった不正行為を許すことができるの?どうぞ殺し屋たちを止めてちょうだい”。

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Text by NewSphere 編集部