米年末商戦、止まらないAmazonの快進撃 5年でネット通販シェア3分の2の予測も

 2016年、米国の11月24日木曜日はサンクスギビングデー(感謝祭)。その翌日の25日金曜日がブラックフライデーと呼ばれ、年末に向けての商戦の開始時期にあたる。各ショップが割引や目玉商品を用意し、買い物客たちが殺到するので多くの店が黒字になる。その現象にちなんで名づけられた。そしてその週末明けの月曜日、店で実物を見たりネット上で検索したりした商品をオンラインショッピングで注文するので、サイバーマンデーと呼ばれるようになった。会社のデスクから注文する人も多いらしい。今年はさらにオンラインショッピングによる年末商戦が好調のようだ。

◆好調に推移してきた米国の年末商戦
 NRF(全米小売業協会)では、サンクスギビングデーがある11月とクリスマス休暇のある12月をホリデーシーズンとしてその消費金額を調査している。10月時点の発表によると、2016年は6,558億ドル(約74兆円)に達し、前年比3.5%増(2011年からの平均成長率は3.5%増)となる予想だった。

 ここで前半に当たる11月末のサンクスギビングデーの終了結果が同協会より報告された。この日に関連したプレゼントなどを購入・計画した人は、1億5,440万人で昨年より2.2%の増加となった。しかし1人当たりの平均支出額は289.19ドル(約3万3千円)と前年より3.5%減ってしまった。購入者と平均支出額から仮に計算してみると、全体の支出はマイナス1%強になりそうだ。その背景を「購入者のおおむね3人に1人がセールス対象の商材のみ購入しているから」(同協会CEO:Matthew Shay氏)と説明している。

 しかし、ホリデーシーズンの後半に向け、オンラインショップや店舗の戦略の調整を続ければ、まだ売上は期待できるとしている(同協会)。とくにオンラインでの購入経験者は44%に達しており、店舗購入者の40%を超えている。ブラックフライデーにはオンラインショッピングも最大の利用者となり、昨年より1.3ポイント上昇、74%に達したとされる。オンラインは素早く施策が実行できるだけに、11月の購入データの分析から12月の仕込みを見直すこともできるだろう。

◆好調の要因はやはりモバイル機器
 会計事務所のPwC(PricewaterhouseCoopers) USの調査によると、昨年より15%増え、62%の人がモバイル機器で商品を探すようになっている。デジタル機器経由での購入は25%増加し、モバイル機器を使ったショッピングもほぼ同じ25%の増加。スマートフォンに発信されるクーポンなどの効果が認められ、若い世代ではSNSの情報でブランドを選択する傾向が顕著になってきた。

 購入しやすさや特別価格のセールスも要因だが、一方で地元の独立したショップや、手作り品への興味の度合いも増している。店頭で買うものを単純にオンライン購入しているわけではなく、買い増しているようすだ。これが安定した年末商戦の背景だろう。また同レポートでは、オンラインで購入後の受取方法についても、消費者はさまざまな受け取り方を望んでいるとしている。この後述べるAmazonが物流網の整備拡大に力を入れている理由がここにある。

◆Amazonの進撃が止まらない
 2015年はAmazon Primeのプログラムにより12月の第三週だけで300万人のメンバーを獲得したとしている。この年のホリデーシーズンで、Primeメンバーによるモバイル機器による購買は2倍以上に増えた。世界185の国を合わせ、出荷の新記録を達成したとされる。

 2016年の第2四半期の売上高は31%増加し、304億ドル 、第3四半期は29%増の327億ドル。その強みのひとつが、商品の探しやすさと言われている。コンサルティング会社のアクセンチュアの調査によると、とりあえず商品を探す際にはまずAmazonをチェックする人が、米国では88%にも上るという。

 そして今回のブラックフライデーも、同社から最高記録達成のアナウンスがあった。ILSR(Institute for Local Self-Reliance)のレポートでは、米国世帯の半数がAmazonの会員で、通販の売上の2ドルに1ドルがアマゾンの売上となる計算。5年以内に全米小売市場3兆6,000億ドルの15分の1をオンラインショッピングによる売上が占め、アマゾンはその3分の2のシェアを獲得すると見られている。もはやAmazonの業績推移が、小売市場のみならずアメリカ経済の重要な位置を占める勢いになっている(フォーブス)。

 売上高の伸び率に鈍化がみられる楽天とは対照的に、日本のAmazonが斬新なサービスで話題になることが多くなった。米国における生鮮食料品宅配サービスや実店舗への取り組みは、購入者が求める商品を求めるスタイルで提供できる体制を目指したものに見える。ことはEコーマースビジネスの覇権争いにはとどまらなくなるということだ。

Text by 沢葦夫