GDPマイナス:海外もアベノミクス限界論に焦点 さらなる円安誘導で克服できるか?

 内閣府は15日、2015年10~12月期の国内総生産(GDP)速報を発表した。季節調整済みの実質GDPは、7~9月期に対し0.4%減、年率換算では1.4%減となった。4~6月期以来、2四半期ぶりでのマイナス成長となった。昨年暮れより、円高、株安の流れが続いた後でGDPのマイナス成長が発表されたことで、一部海外メディアではアベノミクスの限界論に焦点が当てられた。BBCは「これはアベノミクスの終わりなのか」と問いを立てている。

◆予想以上に悪かった、と海外メディア
 GDPの減少幅について、日本経済新聞や読売新聞はほぼ民間予測通りだったと伝えたが、主要海外メディアは軒並み、アナリスト予想よりも減少幅が大きかったと伝えている。ブルームバーグがエコノミスト33人を対象に行ったアンケート調査では、予想の中央値は年率換算0.8%減だったそうだ。またフィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、エコノミストらは年率換算1.2%減を予想していたと伝えている。

 ブルームバーグ、FTは個人消費が弱かったことに注目している。個人消費はGDPの約6割を占める。10~12月期は前期比0.8%減となり、2四半期ぶりで減少した。ブルームバーグは、個人消費の弱さがマイナス分の最大の要因であり、物価上昇、経済成長を活性化する安倍首相の政策を損なっている、と語っている。

◆最近の円高傾向でアベノミクスの効果が帳消しに
 今回のニュースの背景として各メディアが最も重視したのは、最近の円高傾向だ。円高はアベノミクスの効果の重要な部分を打ち消してしまう。ガーディアン紙は、最近の通貨(為替相場)と(株式)市場の混乱が、2012年末の安倍首相の就任後すぐに生じたプラス分を帳消しにした、と語っている。

 円高は株安を招いている。インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ紙(INYT)は、昨年暮れごろから、世界の投資家が安全資産へと逃避したことで円高となり、株価が急落した、と語る。同紙によると、先週、日経平均株価は12%下落したが、これは1週間の下落幅としては、金融危機真っただ中の2008年以来の水準だそうである。

 世界経済の健全さについての懸念が世界の金融市場を震え上がらせており、安倍首相は3年間に及ぶ経済政策運動で、多分これまでで最も厳しい試練に直面している、と同紙は語る。この運動では、円安が極めて重要な柱の1つだが、それが最近崩壊し始めている、と語っている。

 円高は株安をもたらすだけではない。ブルームバーグでは、明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストが、「円高により設備投資と輸出の勢いがそがれるかもしれず、個人消費も現状弱く見え、日本経済の下振れリスクは増しそうだ」と語っている。

◆BBCが語る、それほど円安が重要な理由とは
 アベノミクスにおける円安の重要性をこの上なく強調しているのがBBCである。アベノミクスの核心はリフレーションではなく、円安を導くことだとまで断言している。

 BBCは輸出拡大こそが日本経済再生の道であるとの立場で、それに対して内需の拡大は、高齢化と人口減少が進む日本では望めない、という悲観的な立場だ。安倍首相と首相のアドバイザーは、日本を再び成長させる唯一の簡単な方法は輸出拡大だと知っている、とBBCは語る。

 富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は、「日本国内には成長の原動力が残っていない。なので、輸出が成長の最重要要素だ」とBBCに語っている。シュルツ氏によると、日本経済の成長率1%あたり0.5~0.7%分が輸出によるものだそうだ。

 政府と日銀は円安誘導政策をとり、実際に円安が進んだ。大手輸出型企業にとっては毎日がクリスマスだった、とBBCは語る。しかし現在、唐突に円高に転じている。日銀の黒田総裁が史上初のマイナス金利導入の発表という劇的な処置をとったのは、円高に促されてのことだとBBCは述べる。シュルツ氏は、「円高が始まるまで、日銀にはマイナス金利を導入する意図はなかった」とBBCに語っている。

◆アベノミクスは今回の円高に対処できるのか
 BBCは、円安を求めるという政府、日銀の方針を肯定的に見ている。突然の円高は、外来的な原因によるものだということを述べている。この点にアベノミクスの困難が示唆されるが、BBCは、マイナス金利の導入や、さらなる金利の引き下げにより手の打ちようはあるとみなしているようだ。

 FTは、マイナス金利導入の発表という日銀の措置にもかかわらず、世界経済の他のところでの弱さにより、一層の円高が引き起こされた、と語る。円高により、経済の成長原動力として、輸出と企業投資に頼ることがますます難しくなっている、と語る。国内個人消費の低迷も強調されていて、記事からはアベノミクスの手詰まり感への意識がうかがえるようだ。

 ガーディアン紙は、日銀のマイナス金利採用という最近の決定は、望まれた効果を発揮していない、と語っているが、これにはおそらく円安誘導が含まれるだろう。

◆本当に厳しいのは今年に入ってから?
 今回発表されたGDPは10~12月期のものだが、為替と株はその後、今年に入ってから大きく変動している。従って、日本経済は今期以降、さらに苦境に追い込まれているのではないかという見方がある。

 INYTは、日本のGDPデータはしばしば、後になって大きく改定される傾向がある、と語っている。それと同時に、日本のGDPは増減幅が小さいため、そのような改定によって、プラス成長とマイナス成長が容易に変わってしまう可能性がある、としている。実際、昨年7~9月期は、当初の速報値ではマイナス成長と発表されたが、改定値ではプラス成長だったとされ、2期連続でのマイナスによるテクニカル・リセッション(景気後退)入りを免れた。

 しかし今回に関しては、もし市場のボラティリティーが継続するようなら、日本は今度こそ本当にリセッションに陥るかもしれない、とアナリストらが語っているそうだ。

 ブルームバーグは、個人消費から工業生産、輸出まであらゆる経済指標が昨年12月に急落したと語る。その全てが、今年に入ってからの世界市場の総崩れの前に起こったことだったと語っている。エコノミストへのアンケート調査によれば、今後1年以内に日本が再びリセッションに陥る可能性は、2012年末よりこの方で最大水準になっていると推測されているそうだ。

Text by 田所秀徳