東京のマンションは好投資物件?香港中流層から人気 先進国に流れ込む新興国マネー

 先進国の不動産に投資する新興国の富裕層の動きが止まらない。ロンドン、シドニーなどの住宅価格上昇にも、新興国マネーが影響を及ぼしている。一方、円安で手ごろとなった東京のマンションには、香港の中流層が熱い視線を送っている。

◆もはや庶民には無縁。高騰するロンドンの住宅価格
 ビジネスインサイダー誌によれば、イギリスの住宅の平均価格は約19万6000ポンド(約3550万円)。しかし、ロンドンの平均はその2倍以上の約44万3000ポンド(約8000万円)で、他の地域との価格差は開くばかりだ。

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、今年7月に、ロンドンの一等地にある超高級マンション『77Mayfair』の最上階の物件が、2600万ポンド(約47億円)という記録的高値で売却されたと報じ、エリート投資家に依然として人気が高いことが証明されたと述べている。同紙によれば、メイフェア地区は、昔から富裕層に人気が高く、カタールの王族が不動産の買い占めを行ったことから「リトル・ドーハ」とも呼ばれており、外国人バイヤーには歴史的に人気が高い。

 近年は、外国人富裕層の家庭に生まれ育ち、ロンドンで暮らす若い投資家たちが、良質なライフスタイルを求めて、ロンドンのビジネス街にアクセスのよい、中心部から離れた物件を求める傾向が強いとFTは述べる。不動産サービス会社CBREによれば、人気の地区にある物件価格は、昨年すでに20%以上上昇しており、中心部同様、「ハイテク・セキュリティ、24時間コンシェルジュ、ブティックホテルスタイルの高価な装飾」の超高級物件であることが必須条件らしい。今後もロンドンは、エリートバイヤーの不動産ドリームであり続けそうだと、FTは述べている。

◆チャイナ・マネーの脅威
 中国人富裕層も、もともと海外の不動産購入に積極的だったが、中国の株式市場の混乱と元安が引き金となり、その動きが加速している。不動産会社ナイツ・フランクのデビッド・ジー氏は、「資産を銀行に置いておくのも安全ではないし、元安が続けば価値も下がる」と考えた人々が、より安定した投資先として、海外不動産を選んでいると指摘する(CNN)。

 このチャイナ・マネーの流入を最も恐れているのがオーストラリアだ。住宅市場の過熱は昨年よりは収まってきたものの、シドニーやメルボルンなどの大都市での価格は依然として高く、シドニーの住宅価格の中央値は、100万豪ドル(約8400万円)。今や住宅バブル崩壊の危険性を国際通貨基金からも指摘されているという(シドニー・モーニング・ヘラルド、以下SMH)。

 サクソ・キャピタル・マーケッツのアジア・マクロ・ストラテジスト、カイ・ヴァン・ピーターセン氏は、政府として対策を取るべき時期だが、資源価格の低迷などで経済が伸び悩むなか、不動産市場は成長を見せる数少ないセクターの一つであるため、その余裕はないと説明。もし中国で政治的、経済的な動揺が起こった場合、莫大な額のチャイナ・マネーが逃避し、豪不動産市場に流入すると述べ、予想もつかない結果になるのではないかと懸念している(SMH)。

◆円安で東京の住宅市場も人気
 一方で香港では東京の不動産への投資が盛んなようだ。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)によれば、香港では約19平方メートルのアパートでも400万香港ドル(約6200万円)と、庶民には手の出せない価格。同紙が取材した、香港で経理の仕事をする女性は、同サイズの東京マンションを90万香港ドル(1400万円)で購入し、月々4000香港ドル(約6万2000円)の家賃収入を得て大満足だという。

 東京のマンションが注目され始めたのはもちろん円安がきっかけだが、今年米ドルに対し円が8年ぶりの最安値をつけたことで、勢いがついたらしい。現在は、ネットやビデオチャットを利用し物件を見学せずとも購入できるサービスまである。日本の不動産を紹介する企業、JPハウジングのデレク・リーCEOは、東京の小さなマンションは住宅を初めて購入する香港の中流層に人気で、「投資利益率は最高」と評価。ローンを組んでより広い高額な物件やマンションを丸ごと購入するクライアントも増えてきたが、これ以上の円安はなさそうであるため、今後の購入には注意が必要だと述べている(SCMP)。

 世界経済の先行きが見えないなか、グローバルに過熱する不動産ブームは、しばらく終わりそうにない。

Text by 山川 真智子