韓国がTPP参加意思を表明? 大詰めの日米交渉控え、米国が待機要請 WP紙報道

 環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐる日米間の事務レベル協議が、15日から再開されている。安倍首相は今月28日、オバマ大統領とワシントンで首脳会談を行う。今回の協議は、それに先立って、日米間の対立点を調整するものだ。米議会では、大統領に貿易促進権限(TPA)を与える法案の審議に向けた動きも出てきた。そんな中、韓国はアメリカにTPP参加の意思を伝えたが、アメリカから、今は待ってほしいと伝えられたという。

◆歩み寄りを見せつつも、交渉は厳しく行われている模様
 今回の協議では、主食用のコメの日本への輸入量、自動車部品のアメリカの関税などが主な議題とされた模様だ。これらは、他の項目に比べて協議が遅れていたという(NHK、15日)。

 日本は、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖原料を、農産物の重要5項目として、例外的な扱いを求めている。コメについては、関税を引き下げないかわり、アメリカから、無税か低税率で輸入する枠を設けることで、合意を得ようとしていた。しかし、時事通信(16日)によると、この点では合意に至らず、今後の協議に委ねられる公算が大きいという。一方で、牛・豚肉については、関税で折り合いがつくなど、合意に向けた進展があったようだ。

 自動車部品では、アメリカが、一部品目の関税撤廃に応じる構えを見せた(産経ニュース、16日)。

◆TPPの行方は、米大統領にTPAが認められるか否かにかかっている?
 けれども、こういった協議の内容以上に、オバマ大統領に貿易促進権限(TPA)が認められることが、TPP全体の成立にとって欠かせない条件である、という見方が、海外メディアではしばしば強調される。

 ロイターは、今回の協議は、TPP交渉全体に勢いを与える日米合意に達するためのものだとした。それでも、TPPがうまく行くかどうかは、米議会がTPAを認めるかどうかにかかっている、と日本の当局者が語っていると伝えた。

 米連邦議会の超党派グループが16日(米国時間)に、米上院にTPA法案を提出した。

 アメリカの政治学者イアン・ブレマー氏は、タイム誌で、TPAを認めるべきか否か、米議会内の賛成、反対双方の立場を紹介した。

 ブレマー氏はTPAを、上院が扱う議題として、この10年で最重要なものの一つだとしている。TPP推進派は、TPAなしではTPPはありえず、そうなればアメリカにとって大損害になるだろう、と主張しているという。TPAは、なぜそれほど重要視されるのだろうか。

◆TPAにはどんな力がある?
 大統領にTPAが認められると、交渉の内容については、大統領に任されるようになる。議会は、大統領(米政府)が他国政府と結んだ協定について、全体として賛成か反対かの投票を行うが、個々の合意内容について修正を行うことはできなくなる。

 逆にいえば、TPAなしでは、たとえ米政府と合意を結んでも、後でその内容が議会によって修正されてしまう可能性がある。それを知った相手国は譲歩を示さなくなり、交渉が進まなくなる、というのがTPA賛成派の主張だとブレマー氏は語る。

 これに対して、TPA反対派は、協定の細部こそが重要であって、全体からすれば些細な変更でも、関係者にしてみれば、甚大な影響を持つ可能性がある、と語っているという。有権者の代表である議会に、そういった変更を行う権限が認められない状況は、受け入れがたい、というのだ。

◆TPPはアメリカにとってどんな重要性がある?
 またブレマー氏は、アメリカにとっては、TPPの政治効果および安全保障面での効果が、経済効果以上に重要であると語っている。

 アメリカはTPPによって、世界で最も経済活動のダイナミックな地域での貿易に、より強固な足がかりを得ることになる。それと同時にTPPは、急速に勢力拡大する中国に過度に依存することを避けたいと強く望んでいるアメリカの友邦国の経済も成長させる。このことは、アメリカの安全保障上の利益にとって好都合だという。そのため、TPPは、オバマ政権のアジアへの軸足転換政策の中心的要素になっている、と氏は語る。

 アメリカ国営放送ボイス・オブ・アメリカによると、ブリンケン米国務副長官は、TPPに参加することで、アメリカは、安全保障上の差し迫った必要とは関係なく、この先もこの地域に関与し続ける、という明確なメッセージを送ることになる、と語ったという。

◆韓国がTPP参加意思を表明するも、アメリカは「ちょっと待って」
 アメリカ内での動きがあわただしくなっている中、韓国がアメリカに対し、TPPへの参加意思を正式に表明したという。しかし、アメリカ側は、現在の参加国の間で合意が達成されるまで待つように、と韓国に伝えたという。ワシントン・ポスト(WP)紙が報じている。

 今月、韓国の通商担当の高官らがワシントンを訪問し、アメリカ側の高官らと会談した際に伝えられた模様だ。「おおむねアメリカは、韓国がどこかの時点で、ぜひTPPに参加するべきだと理解していますが、今すぐにではない、と彼らは語りました。彼らは、現在の参加国で手いっぱいなのです」と韓国高官が匿名で同紙に語っている。

 TPA法案が間もなく上院に提出されそうなときである。(編注:WP記事時点。16日提出)オバマ政権は、もう一国が協議に加わることを認めて、勢いに水を差すことには気乗り薄だ――とりわけ、貿易協定のこととなると、押しの強い交渉姿勢で知られている国の場合は、とWP紙は語っている。

 アメリカ通商代表部は韓国がTPPに関心を抱いていることを歓迎する、と同部のトレバー・キンケイド報道官は語っている。韓国高官らの訪問時には「建設的な議論」を行った、とも述べている。しかし、「わが国は今、現時点での参加国と、高水準のTPPを締結することに集中しています」と語っている。

 米外交問題評議会の貿易専門家のエドワード・アルデン氏は、アメリカの反対は「まったく当然」だと語っている。「TPAの討議がまさにこれからという時で、韓国が参加すれば、アメリカ国内政治を紛糾させることになるでしょう」「(大統領は議会の支持を得るのに苦労しているが)韓国の参加は事態を悪化させるだけです」と語っている。

 ただし、イランラジオは、韓国の聯合ニュースの報道として、韓国の産業通商資源省が16日、声明を発表して、WP紙の報道を否定した、と伝えている。

Text by NewSphere 編集部