TPP、年内合意ありえる? 日本紙の交渉進展報道は、両国関係者は否定

 米通商代表部(USTR)のマイケル・フロマン代表は27日、議会の公聴会で、TPP交渉について、数ヶ月以内の妥結へ意欲を示した。5年以上に及ぶ交渉が完了しつつあるという認識のようだ。
 
 交渉に参加している12ヶ国の代表は、26日から、ニューヨークで首席交渉官会合を持った。日本とアメリカは2月2日から、これとは別にワシントンで、農産物と自動車に関する2国間の事務レベル協議を行う。
 
 TPPが締結されれば、その自由貿易圏内での経済活動は、世界経済の40%を占めることになる。

◆TPP締結のゴールは近い?
 フロマン氏はこれまで、TPP交渉妥結の時期目標について明言を避けてきた。今回の踏み込んだ発言の背景には、2015年前半に交渉を完了させ、2016年の大統領選前に議会承認を得たい、という意向があるようだ。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)が、米政府関係者の発言として報じた。

 日経アジアンレビューは25日、アメリカが米国産のコメの非関税枠拡大に合意した後、日本が米国車輸入の基準を引き下げる、というアメリカ側の条件を飲んだ、と報じた。記事によると、詳細な事項についての協議が、28日にワシントンで始まるという。TPP交渉が最終段階に入り、春には完了するのではないか、とデトロイト・ニュースは報じている。

◆日米政府関係者は否定
 ただし、日米両政府関係者ともこの報道を否定しているようだ。日本政府関係者は、「事務レベルの協議は、日本とアメリカの間でまだ続いており、多くの困難な問題が残されている」とロイターに語っている。

 フロマン氏も、上述の報道を否定している。「実際に話し合っている部門について間違っている。自動車と非関税品についての話し合いは並行してすすめている。基準、金融策、規制の透明化などを含め、日本が果たすべき責務について確認するため(両国が)対立している点のしっかりとした、有効な話し合いをしている」(デトロイト・ニュース)として、日本の報道を信じるな、と忠告した。

◆米業界の反応
 TPPに関して、日本は自動車、アメリカは農産物について完全自由化を求め、協議が難航している。

 米自動車業界は、TPP交渉で、為替操作を禁じる但し書きを含めることをオバマ政権に求めてきた。しかし、 フロマン氏らは、それについては世界貿易機関(WTO)などで話し合われるべきだ、と主張している(デトロイト・ニュース)。同業界は、日本銀行が円安誘導を続け、日本車への関税が撤廃されてしまえば、アメリカの自動車産業が打撃を受けることになるのでは、と恐れているようだ。フォードのジー・S・オージェクリー(Ziad S. Ojakli)副社長は、「我々は、相手がだれであろうと、どの国であろうと競合できる。しかし、日本銀行と競うわけにはいかない」と同紙に述べた。

 一方、アメリカの養豚業者団体は、TPP交渉の進展を歓迎する発言をしている。他の農業団体と共に、オバマ政権へ、合意内容を議会に修正させずに、賛成か反対かだけを問える権限(TPA)を与えることを強く求めている。全米豚肉生産者協議会(NPPC)のハワード・ヒル会長は、「NPPCはTPPの最終合意についての判断は控えているが、議会がTPA を承認することは緊急を要し、アメリカが自国の貿易を拡大し雇用を創出するため、合意の最終段階に入る準備はできていると、相手国にサインを送る必要があると考えている」(ロイター)。

 アメリカでは現在、一般労働者の賃金の上昇が滞り不平等感が高まっている。この問題の解決は、政治の最重要課題となっている。フロマン氏は、TPPはアメリカ経済を押しあげ、より高い賃金の仕事を創出する、と説明した(FT)。

Text by NewSphere 編集部